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書・柿下木冠①

画廊の入り口から、
ゴムまりがコロコロッと転がるように入ってきた人がいた。

「あ、柿下先生」と声をかけると、
いたずらがバレたときの「しまった!」というような照れ笑い。

いつまでも少年のような先生です。

現代書家の柿下木冠(かきした ぼっかん)先生に初めてお会いしたのは、
今から20年も前、
ニューヨークでの個展から4年目、インドから帰国した翌年のことでした。

下の作品は、
1996年にニューヨーク・ソホー・キャストアイアンギャラリーで開催された
柿下木冠書個展の案内状、「RAIN(雨)」です。

img20201013_08184133 (3)

ちなみに私の姓の「雨」、手紙の宛名ではこんな感じ。

img20201013_20123843 (3)


この個展の期間中、先生は一人で夜昼ハーレムに通ったという。

「あそこにはアウト・オブ・アフリカの人達が、
いろんな問題を抱えながら暮らしていますが、ぼくはそういう人達と一緒に
バーでお酒を飲んだり踊ったりしました」

個展会場です。
img20201013_08184133 (2)

「怖かったけど違った意味で引き締まったものを感じました。
それはぼくにとってとても大事な事でした。

そのときのことを素材にして書いたのが、合衆国の『衆』です。

文字は自分がどう感動したかによって、意味も表現も全く違ってくるんですね。

ぼくの場合、感動に出会ったらすぐカタチにしないで熟成させるんです。
そこで初めて文字に変換していくわけですが、
それが人間の尊厳とか生命の根源に繋がっていくんだと思うのです。

代表作を書いていくには、”生きる”ということと噛み合っていないとダメ。
現代の社会と絡み合いつつ内なる自分に向かっていかないと
言葉になりません。

だからぼくは一年に2点ほどしか書けない。
年に3点書けたら大ハナマルです(笑)」

「衆」
img20201013_08262039 (5)

「ニューヨークへ行って、ぼくは変わりました。
何かそこに自分が求めていたものがあって、それを発見した。
それで書くテーマが絞れてきたんです。

それまでは日本の美を書くというような、
切り込みが浅いというか生活が甘かったというか…。

例えば一つのイメージがあってそれに紙をかぶせた。
それがニューヨークへ行ってから、オブラートに包まず
ズバリと入っていくようになったのです。

結果的には魂が入ってくる、生命の根源に入っていく。
それができないと気がすまない、
そういうところにきたんです」

ニューヨークでのデモンストレイション中の柿下先生。
img20201013_08234520 (2)

「昨年、インドの一番汚いところと言われるベナレスに行ったんです。
ニューヨークのハーレムと共通点があるんですが、
自然もいいけど人間を書きたいという思いがあって。

日本の美しい緑の風じゃなくて、土の色をしたベナレスの風を書きたくて…。
その風の中に命みたいなものを入れたいな、と思っているんです」

「ベナレスの風」と柿下先生。
img20201013_08262039 (4)
静岡市のご自宅にて。

20年前にお聞した言葉の数々、今もそのときのまま新鮮です。

深く感動した時の魂の叫びは、どんなに年月がたとうとも生き続ける、
私はそんなふうに思っています。


※参考文献・画像提供/「柿下木冠ニューヨーク書個展・帰国展」1997


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高島先生ブログ(10・13)

「埼玉県さいたま市桜区田島・如意輪観世音堂」

絵を描かれた酒井正さんは、元・文字デザイナー。
後年、原因不明の歩行困難になりましたが、
自転車と杖で石仏と力石行脚。

膨大なスケッチは、「さいたま市の力石」(高島先生との共著)、
「郷土の石佛」(自費)として出版されました。

俳名の「一止」は、ご自分の名前「正」を分解。
「1のところで止める」意だとお聞きしました。


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雨宮清子(ちから姫)

Author:雨宮清子(ちから姫)
昔の若者たちのスポーツ「石上げ」に使われた「力石(ちからいし)」の歴史・民俗を調査研究しています。力石のことを少しでも知っていただけたら嬉しいです。

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