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スポーツの軍国化

日本ではまだあまり知られていなかった重量挙が、
「ふさわしくないスポーツ」とされて、
体育大会から除外されことは前回書いた。

除外されたのは、知名度が低いからだけではなかった。

時代が第二次大戦へと向かい、日本が軍国主義国家になったため、
スポーツまで軍国化していったからだと、
「国立競技場の100年」の著者、後藤健生氏はいう。

「戦時色が増すにつれ、1930年代半ばごろから、
西洋の近代スポーツは否定され、日本精神が求められて、
日本古来の武士道を尊重するようになった。
それまではリベラルなスポーツ大会だった明治神宮大会も、
変質していった」

このころ、小学生にまで木製を持たせて「戦技訓練」を始めた。
こどもたちはみんなはだしです。

img055_201807210906409e3.jpg

「そのため、
日本古来の剣道、柔道、撃剣、槍術、相撲、馬術などが推奨され、
ボクシングやフェンシング、レスリングなどは、
「不要なスポーツ」という烙印を押された」

「競技種目にはさらに陸軍の提案で、「行軍競争」「手りゅう弾投てき突撃」
などの「国防競技」「集団主義」が加わった」

「こうした中、敵性スポーツとして批判を浴びた野球は、
自己保身のため、アメリカ生まれのハイカラなイメージから、
武士道精神を強調するスポーツへと変身。

現在の甲子園の高校野球に見る軍隊調の行進や選手たちの坊主頭
集団主義・自己犠牲が過度に強調された様子、
早いイニングから犠牲バントやスクイズの多用などに、
戦時下の片鱗を見ることができる」

今年、甲子園出場校の北海道の高校では丸刈りはやめたとありましたね。
戦後73年もたっているのに、それがニュースになるのだからすごい。

今じゃ、スポーツドリンクまであって「飲まなきゃ死ぬぞ」が常識だけれど、
子供のころは、マラソンのときでも先生はこう言った。
「水は飲むな。飲むと体に悪い」

その本当の理由は、
戦地で兵隊に充分水を支給できないことへの言い訳だった。
それが公然と暴露され始めたのは、昭和の終りごろだった。ひどい話だ。

戦争の影響って、一度沁みこんだら何十年も生き続けるってことか。

さてこの時期、徳蔵の息子の飯田定太郎(写真左。右は南治作)も、
こうした日本精神を強調した大会に参加しています。

南治作飯田定太郎 南治作飯田定太郎裏書

写真の裏にはこう書かれています。

「昭和拾参年拾壱月六日 国民精神作興体育大会 
最終日 閉会式後 神保町角ノ写真屋ニテ写ス 
南治作 飯田定太郎 十七才

大会は昭和13年(1938)11月に行われた。

この半年まえの4月に日本政府は、
すべての国民が戦争遂行に協力しなければならないという
「国家総動員法」を発布。

そしてこの年、2年後の昭和15年(1940)7月に開催の予定だった
オリンピック東京大会を日中戦争激化で返上した。

そのオリンピックの代わりに行われたのが、
この「国民精神作興(さっこう)体育大会」だったのです。


<後半は次回へつづく>


※参考文献/「国立競技場の100年」後藤健生 ミネルヴァ書房 2013
※画像提供/「写真で見る体育・スポーツ百年史」上沼八郎 日本図書センター
         1974
        /飯田徳蔵子孫

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非公開コメント

No title

飲み水の話は知っていましたが理由までは知りませんでした。
感動です。

No title

戦後、何十年たっても、この「スポーツのとき、水を飲んではいけない」という指導は続きました。軍隊での洗脳の怖さですね。
明治のころ、有名な作家で軍医だった森鴎外も「脚気」の原因について間違った考え方をしてたくさんの兵士を病気にしてしまいました。他の科学者が脚気の原因はビタミンBの欠乏だから白米ではなく麦飯を食べさせろと言ったにもかかわらず。

江戸時代、白米を食べていたのは江戸の人たちで、だから殿さまから庶民まで脚気で苦しんだそうですが、地方の庶民は雑穀しか口に入れられなかったから脚気にならなかったんじゃないかと思います。

reply1

江戸の脚気は有名です。白米を食べるのが都会暮らしの特権だったようです。しかも男性は白米5合に対しておかずは漬物だけだったため尚更脚気になりやすかったみたいです。
玄米を食べていた地方庶民は脚気にならなかったそうです。
白米による脚気が明治でも起こったことは初耳です。
雨宮さんの情報には感心します。
プロフィール

雨宮清子(ちから姫)

Author:雨宮清子(ちから姫)
昔の若者たちのスポーツ「石上げ」に使われた「力石(ちからいし)」の歴史・民俗を調査研究しています。力石のことを少しでも知っていただけたら嬉しいです。

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