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文弥まつり・でくの舞②

浄瑠璃の表題は「出世景清」。
で、私、思ったんです。なんで「出世」とつくのだろうって。

作者の近松門左衛門は、その最終章の「五段目」をこう締めくくっています。

「源頼朝は自分の命を狙う景清を捕えて首を刎ねた。
そしたら観音さまの首が落ちた。つまり観音さまが身代わりになったのだ。
これを見た頼朝は深く感じ入り、景清を赦した上、日向国まで与えた。

この温情に景清は声をあげて泣いた。
でも気がかりなのは、頼朝の姿を見たら起きそうな復讐心です。
そこでそうならないよう、己の両眼をくりぬいて頼朝に差し出した」

うーん。なんでこれが「出世」かいな?

この作品は近松の「出世作」だから「出世」とつけた、
なんて説もあるようですが、よくわかりません。

話を戻します。
こちらは牢屋につながれた景清に酒を差し入れる「おのの姫」です。
なんでこうなったかというと、

38

頼朝の命を狙う景清は、頼朝の重臣に正体を見破られて京都へ落ち延びます。
その京都で平家全盛時代に愛した「阿古屋(あこや)」と二人の子供と再会。
しかし、阿古屋は兄からおのの姫のことを聞かされて嫉妬に狂います。

そのころ京都・六波羅では、熱田の大宮司とおのの姫が捕えらえて牢獄に。
それを知った景清は二人を救うため名乗り出て、自ら入牢の身となった。

で、赦免された姫は愛する景清のために牢獄を訪れては
酒を飲ませたり食べ物を差し入れたりしている、というわけです。

もうね、警備ユルユル。

それはさておき、
「おのの姫」の遣い手さんと「景清」の遣い手さんのお二人、
目線もすごいけど、阿吽の呼吸と緊張感、ビンビン伝わってまいります。

姫おのの

近松は、能「景清」や「大仏の供養」、舞曲「かげきよ」を元にして、
この作品を書いていますが、
今までにない「画期的」な作品ということで、たちまち大衆の人気を博します。

その画期的なものの一つが、
「悪女・阿古屋」と「貞女・おのの姫」との対比という設定なんだとか。

能とはどこが違うかというと、能の「景清」の内容はこんな感じ。

「源氏に捕えられ日向国に流された景清は、
源氏の世など見たくないと自らの両眼をえぐって盲目となります。
そこへ熱田の遊女に生ませた娘が尋ねてくるー」

まるっきり違います。神さびています。
近松景清は人間臭くてドロドロですが、こちらは重々しく静謐(せいひつ)です。

   能「景清」の面(おもて)    歌舞伎の「景清」
   面  景清歌舞伎
    梅若万三郎家所蔵       三代目歌川豊国・画

能については、つねまるさんのブログ
「戦国時代を追いかけて 日本のつまみ食い紀行」をぜひご覧ください。
つねまるさんは昨年、一大決心をして能の世界に飛び込んだ方です。
能についての質問、どうぞ、つねまるブログへどんどんお寄せください。

さて、
こちらは牢獄の景清の前で、二人の息子を殺して自害する阿古屋です。
悲劇的です。これを「シェイクスピアの一大悲劇」に比す人もいます。

で、なんでこんな結末になったかというと、嫉妬にかられた阿古屋が、
懸賞金を狙う兄に、景清の居場所を教えてしまったからなのです。

あこや戸子供たち

で、阿古屋は自分の非を詫びますが景清は許さず、
「父上助け給えや」とすがる我が子にまで、こんなひどい言葉を投げつけます。

「皆あの母めが悪心にて、
邪悪な女の胎内より出でたるものと思へば、汝らまで憎いぞえ」

なに言ってんのよ、景清さん。もとはと言えばアンタが悪い。
それに牢屋に入ったのは、おのの姫愛しさゆえだったでしょうに。

とまあ、大近松サマにイチャモンつけても始まらないけど。

忠義の証しに己の目ン玉を差し出して、かつての敵、頼朝から、
「仁義の勇士・武士の手本」と褒められて日向国までもらっちゃた景清さん、

「日向の国を本領し、悦び悦び退出す」

で、やっぱり私、思うんですよね。
憎っくき相手から領地を賜わった途端、嬉しがってシッポ振って、
「昨日までは平氏、今日からは源氏」って、

それがなんで「出世」なの?


<つづき>
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プロフィール

雨宮清子(ちから姫)

Author:雨宮清子(ちから姫)
昔の若者たちのスポーツ「石上げ」に使われた「力石(ちからいし)」の歴史・民俗を調査研究しています。今、「力石からバーベルへの道」を書いています。

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