フンだり蹴ったり

今から9年前の2011年6月、偶然、力石と遭遇しました。
さんざん歩き回って何も収穫がないことが多いけれど、
ひょいと出会うことがあるんです。

これはそんな嬉しい発見です。

力石があったのは、静岡市清水区の春日神社です。
その日は地元の歴史団体主催の歴史散歩に参加。
参加者のみなさんはガイドさんを囲んで熱心に説明を聞いています。
そしていっせいに神社の屋根や立派な石碑を見上げています。

私はというといつものクセで、地面や建物のばかりに目を向けています。
知人から「神社や寺へ来ると異様な目つきになる」と笑われていました。

その「異様な目つき」で見つけたのが、これです。
「力石」の文字がババッと眼に飛び込んできました。

小さく見えますが、タテは48㎝もあるんです。
CIMG0117.jpg
静岡県清水区追分・春日神社  48×33×30㎝

拝殿脇にゴミと鳥の糞にまみれてチンマリと。
うんまぁ! フンだり蹴ったりだ」って思いましたよ。

団体行動だからとその日はあきらめ、みなさんの後を追いました。
数日後、再び現地へ来てみたら、神社の屋根の修理中で、
なんと足場が力石を踏んづけていた。

重みで石が割れなきゃいいなあと心配しつつ、
寸法を測り写真を撮っていると、背後になにやら気配が…。
振り向くと、中年の女性が険しい顔で私を凝視している。
「こんにちは」と声をかけたら、慌てて逃げた。気にせず作業続行。

しばらくして、とにかく神社の総代さんを見つけなきゃと聞き込み開始。
手始めに境内に建つ社務所兼公民館の呼び鈴を押したら、
さっきの女性がドアのすき間から目だけのぞかせ、いきなりバタン!

こんなことでメゲてはいられません。
なにしろ静岡県では数少ない刻字の力石ですからね。

「片手差しの力石 嘉永四年生 鷺坂力蔵 納 鷺坂粂吉」

片手差しです。
差し上げた石が蓮の花のように見えるところから「蓮華差し」ともいいます。
「蓮の花には見えないよ」って? 腕が茎、茎の先に花。美しいじゃないですか。

img180.jpg img076_2018012411445283b.jpg
「力石ちからいし」(高島愼助)より、
右は「麻機遊水池の自然」(静岡県土木事務所)よりお借りしました。  

聞き込み続行。
垣根の切れ目から隣りへ入ると、なにやら古そうな建物が忽然と。

「追分のお不動様」、真言宗醍醐派の明王山延寿院です。
追分(おいわけ)とは、街道が分岐したところです。
寺は春日神社と背中合わせに建っていました。

創建は室町時代ごろらしいと言われていますが、
徳川将軍・四代家綱時代の寛文八年(1668)銘の鰐口が現存しているとか。

現在の建物は昭和50年に再建されたもので、
地域の方々からの浄財をもとに、
岐阜市の指定文化財建築専門家の田中繁太郎氏が手掛けたそうです。

延寿院です。県指定文化財。
CIMG4078.jpg
静岡市清水区追分

この延寿院の裏側に民家があって、
老夫婦が縁台で涼んでいたので、これ幸いと声をかけると、
なぜかおばあさんが慌てて家の中へ。
足の悪いおじいさんは動けず、そのまま硬直状態です。

怪しく見られた? 小さなリュックにカメラを持っているだけなのに。
ま、気を取り直して固まっているおじいさんに「力石…」と言ったら、
おじいさん、途端に相好を崩してしゃべりだし、おばあさんまで顔を出した。

「おお、力石かね。前は2個あったっけェが、
いかいほうは戦後、なくなっちゃった。どけェいっただら。いかかったっけよ

バッチリ静岡弁です。
かつて東京から静岡へ転居してきたとき、隣りの奥さんが
いっきゃあキュウリがなってる」と話しかけてきたので、
思わず、えっ?あっ!

「いっきゃあ」「いかい」も大きいという意味で、最後の「わ」は、
東京言葉を真似たものでした。そこまでしなくてもね。なんかセツナイ。
で、今受講している某講座の先生が昨日、いみじくも言ったんです。
静岡へ来たらみなさんがけェって言うのでびっくりしたと。

ちなみに同じ「けェ」でもお隣の山梨県では、「そうけェ」(そうですか)。
静岡では「そうかい」とか「そうかね」で、「そうけェ」とは言いません。
じゃどういう使い方かというと、例えば、
「僕らン子供時分にゃー、こんなふうに言ったっけェが」と、こんな具合。

さて、延寿院の隅にこんな石があったけど、
ひょっとしてその「いかい石」ってこれかな?
でももうこの石がそうだったのか知る人は誰もいません。

CIMG4080.jpg

で、おじいさんはさらに情報をくださった。
「あんなおめェもん、よく担げェたっけなァ。あれ担いだ男の家があるよ」
すっかり警戒心を解いたおばあさんが、「そこ行ってあそこ曲がって」と。

ちなみに「おめェもん」は「重いもの」のこと。

さっそく教えていただいたご子孫宅へ。
応対してくださった鷺坂さん、戸惑いつつも、
「そうです。力蔵はうちの先祖です。
でも東京から来たということしかわからないんです

それでも私は大満足。
お礼を申し上げて辞し、その足で清水中央図書館へ急いだのでありました。


<つづく>

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気が楽になりました。
時間に余裕があって気力が充実しているとき挑戦してみます。

この歳になると用語からわからずアタフタ。
ストレスばかり溜まってもういいやになりますが、
おかげさまでちょっとやれそうな気持になりました。
ありがとうございました。
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雨宮清子(ちから姫)

Author:雨宮清子(ちから姫)
力石(ちからいし)のことを知ってほしくて、ブログを開設しました。主に静岡県内の力石と力石を詠んだ句や歌、力石探しのつれづれを発信していきます。

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