協力者のパワー

昨年暮れ、野田市役所から「万治石」についての電話を頂戴した折り、
役所の方がこうおっしゃった。

「しかし、この力石は神社所有なので役所で保存に動くことはできません。
それで神社の宮司さんに、
これは大変貴重な石なのでぜひ保存を、とお願いしたところ、
早速、氏子さんたちに話して善処したいと言っていました」

そうなんです。
時々「役所に保存をお願いしたのに何もしてくれない」という話を聞きますが、
保存は所有者がするものなんです。

私が関わった保存の話、2、3 お聞きください。
すでにこのブログでご紹介してきましたが、再度…。

一番早い保存は5年前の2013年の、
静岡県富士宮市大晦日(おおづもり)の力石です。

最初はこんなふうに放置されていました。この峠の向うは山梨県です。
CIMG0529.jpg

2個あります。
5個あったそうですが、右の石垣に使ってしまったとか。

この石の発見と保存に至るまで、10数人の方がご協力くださったのです。
石の所在地はバスも通らない山のテッペンだったので、
いつも協力者のご夫婦が半日がかりで車で連れて行ってくださって…。

最初は私の講演を聞いたこのご夫婦が力石に興味を持ってくださり、
それを知り合いの方に話したら、力石なら実家にもあるよ、と。
案内されて行ってみたら、写真のような状態で置かれていました。

このことはすぐ、その方の兄でご当主の望月氏へと伝えられました。
それから間もなく、「よし、保存しよう」となったのです。
秋祭りに懇意にしている石屋さんに引き合わせるから来てくれという。

秋祭りとは大晦日集落の氏神さま、芭蕉天神宮のお祭りです。
この日ばかりは山上に子供太鼓が鳴り響き、露店も出て大にぎわいです。
そんな中私は、他県の保存写真を持参して石屋さんにお会いしました。

それから半年後、協力者のお一人から電話がきました。
「雨宮さん、喜んでくれ。出来たぞ! 立派なものが」

これです。見事に保存された力石、どうぞご覧ください。

CIMG0620_201801041254434eb.jpg

この保存は石屋さんが、望月氏への恩返しをこめて無償で設置。
「力石は初めて知りました。石屋としていい仕事をさせてもらいました」と。

ほんの半年前まで、私はご協力いただいたみなさんとは面識もなかったのに、
それをここまでしてくださった。もうなんといったらいいのか。

石屋さんです。
CIMG0613.jpg

このことから、同集落の方の家にご自分が使った石があることも判明。
新たに3個の発見につながりました。

石を保存した場所にはかつて青年集会所があって、
その広場が力比べの場所だったそうです。石はそのときのものでした。
広場にある大カヤの木は対岸の集落からもよく見えて、
青年たちはその木を目指して集まったそうです。

また、昭和50年代まで力比べをしていたとのことで、
多くの方から体験談を聞くことも出来ました。

市の文化財保護審議会へ民俗文化財の申請を、と勧めたら、
望月氏は「そうなればいいなあ。それまでがんばって生きる」と。

代々この集落を守ってこられたご当主の望月ご夫妻です。
CIMG0611.jpg

それ以降私は、
芭蕉天神宮の春と秋のお祭りには、一升ビン持参で参拝。

そんな私に会うたびに、望月氏は「文化財はまだかねえ」と。
でも残念ながら、それは実現しませんでした。
それから間もなく、ご当主は天寿を全うされて黄泉路へ。

その亡き夫の墓前に正座して、
寒風の中、残された奥さまが切々と歌った「武田節」。

♪ 祖霊ましますこの山河 
   敵に踏ませてなるものか
   人は石垣 人は城


私は涙が止まらなくなりました。今でも耳に蘇ります。

そのころの富士宮市は、
「富士山世界文化遺産」で、それどころではなかったのだと思いますが、
後日、若い学芸員のお二人に、
力石の話をゆっくり聞いていただく機会を与えていただきました。

望月一族が守ってきた芭蕉天神宮です。
杉林の山道をクネクネ登って行くと、忽然と現れる「天空の社」です。

CIMG0510 (2)

超がつくほどの限界集落ですが、力石は望月氏亡き後も芭蕉天神宮と共に、
ご子孫と周辺集落の方々の手でしっかり守られております。


<つづく>
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おはようございます

素晴らしい話をありがとうございます。

多くの力石、個人だけでなく周りの人の努力などで、
立派に保存されて嬉しい限りです。

私も、貴ブログで力石の事を知りました。
それ以来気になっていますが、なかなか出かけられず、
神田や千歳烏山に機会があれば訪れたいと思っています。
これも雨宮さんの努力を思うと頭が下がります。

訪問後はブログに出したいものです。
今年の課題にしたいとも思います。
このことが、貴ブログに少しでも報いられれば、
幸いと思っています。

お寒うございます

one0522さま、ありがとうございます。

もしかしたら保存なんか持ちかけられて、ご迷惑かけているかも、という気持ちが常にあります。でも庶民のこうした文化や風習を忘れて欲しくない、
そんな思いでやっています。
静岡県には民俗文化財になった力石は一つもありません。
なんとか突破口を開きたいのですが、難しいです。

どこかで力石を見かけたら、ぜひブログに載せてください。
楽しみにしております。

No title

一つの石を巡ってたくさんの思いが交錯してゆく様は何とも言えない気持ちになりますね。
しかし、力石が今ではただ単に文化財となっているのは私には幸運です。
だって、『色男、金と力はなかりけり。』というじゃありませんか。

No title

今は「色女、金も力もすべてあり」の時代ですから「色男」だけで充分かも。

だってボクシングにずいぶん美しい女性が出てきますもんね。重量挙げの三宅選手なんか怪力ですが、素顔はおしとやかで可愛い女性ですし。
プロフィール

雨宮清子(ちから姫)

Author:雨宮清子(ちから姫)
力石(ちからいし)のことを知ってほしくて、ブログを開設しました。主に静岡県内の力石と力石を詠んだ句や歌、力石探しのつれづれを発信していきます。

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