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釣り

柴田幸次郎を追う
08 /19 2016
「寛政の三美人」の一人、高島屋おひさの年齢がちょいと合わない。
でもまあ、たかだか10余年の誤差だから目をつぶることにして先を急ぎます。

おひさのご亭主となった人は、釣具・釣り舟店「東屋」の初代茂八。
「この店は文化頃に起こった」と「竿忠の寝言」の忠吉さんは言っています。

文化年間は14年と長いから、特定するのは難しいが、
とにかくこの年月の中で茂八は店を起こし、おひさと夫婦になった。
その初代茂八は58歳で亡くなり、二代目は61歳で没したそうです。
そこまで知っていて忠吉さん、なんで没年を書かなかったのか。

なんとも悔しい。

ちなみにおひさたちを描いた喜多川歌麿は文化2年に没しています。

ここでちょっと釣りの話を…。

これは釣りのバイブルといわれた「釣魚大全」です。
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著者はイギリス人のアイザック・ウォルトン
1653年初版。日本でいうと江戸初期、四代家綱の時代です。

「釣りは芸道」といい、釣魚を哲学にまで深めた名著といわれています。

私がこの本を読んだのははるか昔のことで、内容はおおかた忘れました。
覚えているのは、ウグイだったか、
その川魚のお腹に詰め物をする料理があって、
それを真似て作ってみたものの、不味くて捨ててしまったことや、
外国にもカジカがいるんだと驚いたことぐらいです。

その「釣魚大全」に匹敵する釣りの書物が、
日本にもあったことを最近知りました。

時代はずっと降って、
弘化三年(1846)、黒田五柳が書いた「釣客伝」です。

「釣客伝」のさし絵。
img103 (2) img103.jpg

五柳の紹介する釣り場は江戸に限らず江の島、箱根、小田原と広範囲で、
場所の選定、魚の種類による釣り方、道具などと事細か。
そして、やっぱり出てくるんですね。
忠吉の父親「釣音」が、その昔、弟子入りしていた和竿の「東作」が…。

「鮒三仕舞手本の竿は、下谷釣道具屋東作、是を始めるなり」

子供のころ、私も兄たちに倣(なら)って釣りをしました。
その辺に生えている笹にテグスと針を付け、
河原の石をひっくり返して獲った川虫をグググッと針に差し込んで…。

そんないい加減な竿でも、昔の川には魚がたくさんいたんですね。
アブラッパヤが面白いようにかかりました。
天ぷらにして食べましたが、なかなか美味でした。

その後東京暮らしになったけれど、
都会の暮らしは好きになれず、一家で静岡へ転居。
で、夏になるとよく鮎釣りに出掛けました。一番簡単なエサ釣りです。


鮎釣り中の私。エサ釣りは友釣りの方たちに嫌がられました。
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静岡市・安倍川

転居後、東京から夫の知人たちがやたら遊びに来るようになりました。

ある日川遊びに出掛けた時、客の男が何を思ったのか、
幼稚園児だった二男をいきなり流れに放り込んだのです。

私はとっさに下流へ猛ダッシュ。
流れが速くて、二男は水没したままあっという間に7、8メートル流された。
そこに偶然夫がいたことが幸いして…。とにかく間一髪。
体を掴んで水から引きあげたときは、安堵と怒りで身体が震えましたが、


客の男は「奥さんは神経質すぎる」とへらへら。

「川の流れは二層になっているんです。
穏やかな流れの下にはもう一つ流れがあって上と下では速さが違うんです。
だから下の流れに足を取られたら引きずり込まれて、
そのまま本流へ流されて、そうなったらもう見つかりません。
まだ泳げない子供をしかも不意打ちして。あなたはとんでもないことを…」


と言いたかったけど、実際にはこの半分も言えなかった。
でも川のことは、
本から得た知識ではない。子供の頃、川から教わった川の教訓です。

で、その帰路、都会の夜の海しか泳いだことがないこの男、
渡河するとき、ヒザほどの浅瀬で足を滑らせて転倒。
ビールっ腹が邪魔してか、水流の強さに起き上がれず、
石の上をガラガラ音を立てて流されていきました。


浅瀬に乗り上げてようやく止まった男に言ってやりました。

「一級河川を流れるなんて名誉なことで…」

これだけはやんわりとですが、言えました。

<つづく>

※画像提供/「釣魚大全」アイザック・ウォルトン 角川書店 昭和50年
     /「続燕石十種・第一巻」「釣客伝」黒田五柳 弘化三年
     監修森銑三・野間光辰・朝倉治彦 中央公論社 昭和55年
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アユを釣る姫

ワタクシは釣りをしたことが一度もありません。
山仲間は沢へ入るとイワナやヤマメを釣っていましたがワタクシは喰うばかり。
文化・文政という時代はいい時代でしたねぇ。
調べるといろんな資料は出てくるし、個性豊かな人物が登場するし、おひさのような美女もたくさん描かれているし、・・・

残暑お見舞い申し上げます

ヨリックさま
コメントありがとうございます。

釣りは楽しいですよ。
水面下で魚がエサを突っついているときは息を殺して見つめています。
この瞬間が一番楽しい。
鮎は小さくてもヒキが強くて釣り甲斐がありますが、カジカはスポンといった感じで簡単にあがります。
カジカは甘露煮がおいしいですね。

江戸時代は明治の薩長政治家が悪く言ったので、ずいぶん損をしていますよね。本当は薩長より幕府の方が民主的だったという説もあります。

時代の趨勢とはいえ、開国を迫る米英露仏などの態度には今さらながら腹が立ちます。もう日本はやられ放題でしたから。今も同じかも。

雨宮清子(ちから姫)

昔の若者たちが力くらべに使った「力石(ちからいし)」の歴史・民俗調査をしています。この消えゆく文化遺産のことをぜひ、知ってください。

ーーー主な著作と入選歴

「東海道ぶらぶら旅日記ー静岡二十二宿」「お母さんの歩いた山道」
「おかあさんは今、山登りに夢中」
「静岡の力石」
週刊金曜日ルポルタージュ大賞 
新日本文学賞 浦安文学賞