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「竿忠の寝言」

柴田幸次郎を追う
08 /04 2016
図書館でフランス士官の写した「大王石」の写真を見つけたのが7月28日。
この石を持った人物の特定ができたのが、それから4日後の8月1日。

のめり込んだら周囲が見えなくなるのが私の習性です。

この時も「大王石」という獲物を得て燃え上がり、猪突猛進。
自分で思っていた以上の早い展開でした。

ことの発端は、ここから始まりました。

ネットで「竹林舎 唐変木のそばバカ日誌 人生の徒然を」というブログを
見るともなしに見ていたら、
「竿忠の寝言」なる変わったタイトルの記事がありました。
読み始めたら、これが実に面白い。

おきゃんな小娘になりきって、
ひと夜、「寝言」の中の江戸から明治の下町をほっつき歩きました。

「竿忠の寝言」の主人公は、明治の竿師三名人の一人、
江戸和竿職人「竿忠」の初代・中根忠吉です。
 ※中根忠吉 元治元年(1864)~昭和5年(1930)

こちらは「竿忠」五世四代目・中根喜三郎氏の仕事場。
忠アド街竿

「竿忠の寝言」は1931年に私家本として刊行され、その45年後に復刻。
四代目喜三郎氏のいとこにあたるブログ主さんが、
ご子孫の了解を得て、ブログに掲載していたそうです。

この本は忠吉の孫で「竿忠」三代目の中根音吉さんが、
祖父からの聞き書きや日記などをまとめて、初代没後に刊行したもの。

実母に邪険にされた子供時代、幼くして職人を目指した健気さ、
貧しさの中で妻に先立たれ、残された幼子を男手一つで育てたつらさ、
そうした苦労をさらりと受け流して生きてきた江戸っ子職人の物語です。

忠吉は孫の音吉を可愛がり、
上野の美術館や骨董店などにひんぱんに連れ出します。

また火事場へ出るのが好きで、刺し子の装束はひと揃えあった。
芝居も大好き、俳句もやった。俳号は竹林舎雨雀
頼まれて、パリの万国博覧会へ和竿を出品。好評を博した。

第二代総理大臣・黒田清隆に贔屓にされて、たびたびお屋敷へあがった。

ちなみに黒田公は、世田谷区の幸龍寺にある「力士 本町東助碑」や、
伊豆大島の力持ち、大島伝吉の碑に揮毫した人です。
かつては「力士」は相撲取りのことではなく、
「力持ち」をこう呼んでいました。

img575 (2)
大島町・岡田港  作図/高島愼助教授

竿師・忠吉には、当時の官僚や公家からも和竿の注文が入った。
職人は玄関から入っちゃいけない。必ず裏口からとわきまえて伺うものの、
こと竿に関しては相手が誰であれ一歩も譲らない。

ケンカの仲裁はたびたび頼まれた。
弥次・北よろしく仲間三人と諸国見物へも出かけた。
以前から素人の力持ち連中の仲間に入って、
石や俵を差したりしたくらいだから、なりこそ華奢だが骨太で中々力があった。


こちらの写真は洲崎神社の力石群です。
ここには徳富蘇峰揮毫の「名人竿忠之碑」があります。
ただ残念ながら、忠吉銘の力石はありません。

img630 (2)
東京都江東区深川木場・洲崎神社 「東京の力石」より

住まいは徳右衛門町二十七番地、六軒長屋の一番はずれ。

忠吉の父親「釣音」が弟子入りしていたのが「泰地屋東作」で、
その家の裏隣りに酔っぱらいの絵師が住んでいた。
「たぶん、猩々狂斎だったと思う」と忠吉はいう。


天才浮世絵師・河鍋暁斎をなんのてらいもなく
「酔っぱらいの…」というところがさっぱりしていて好もしい。

ブログに掲載されていた「竿忠の寝言」、
目にしたのが最終章からだったので、そこから読み始めました。
読み進むに従い時代を遡り、いよいよ15、6歳の少年忠吉に差し掛かった時、

まさかの展開!

目に飛び込んできたのが、なんと、あの「大王石」の文字と、
それを持った人物の名前だったのです。


<つづく>

※「竿忠の寝言」中根音吉 1931刊行。1976年、文治堂書店より復刻。  
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鍵コメさまへ

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たまたま知ることが出来たもので、私自身は全くの門外漢のため、
ご期待に添うことができません。
大変申し訳なく心苦しいですが、どうぞ、ご了承ください。
貴重なものなので、しかるべき方へ渡ることを願っております。

雨宮清子(ちから姫)

昔の若者たちが力くらべに使った「力石(ちからいし)」の歴史・民俗調査をしています。この消えゆく文化遺産のことをぜひ、知ってください。

ーーー主な著作と入選歴

「東海道ぶらぶら旅日記ー静岡二十二宿」「お母さんの歩いた山道」
「おかあさんは今、山登りに夢中」
「静岡の力石」
週刊金曜日ルポルタージュ大賞 
新日本文学賞 浦安文学賞