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「馬」のあれこれ②

力石
07 /04 2016
前回、卍を刻んだ顔らしきものを胸から出している
謎の「馬頭」さんをご紹介しました。

静岡県伊東市にはこんな馬頭さんもいらっしゃいます。
観音様におんぶ、というより背後霊みたいにのしかかっています。

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静岡県伊東市・弘誓寺の無縁墓地
「伊東ー石佛石神誌」伊東市立伊東図書館 平成12年より

力石にも「馬」を刻字したものがあります。
場所は東京都墨田区の牛嶋神社
その昔は「牛御前社(うしごぜんしゃ)「牛の御前(みまえ)といいました。

ここです。奈良・大神神社と同じ三つ鳥居です。
CIMG0938 (2)

こちらは、
「新撰東京名所図会」=風俗画報 明治30年=に描かれた牛嶋神社です。
img085.jpg

左が隅田川。桜の名所でした。
黄色の丸が本殿。赤丸の中に牛が描かれています。

その撫で牛さんは今も健在です。
CIMG0940.jpg

なぜか赤いよだれ掛けをかけています。

ちなみに、
地蔵さんによだれ掛けをかけるのは、
死んだ我が子の匂いを地蔵さんに知ってもらうためで、
「この匂いのする幼子が賽の河原で泣いていたら、どうかお救いください」
と願った哀しく切ない親心がこめられているんです。

ここの牛さんのはどういう意味があるのでしょうか。
よだれに薬効があるとか。

また、牛がいるからといって、天神さんではないみたいです。
「牛は大人(うし)または主(ぬし)の借字」とか。

青丸のところに石碑が描かれています。
いま、このあたりに力石が集められていますが、
残念ながら、とても「保存」とは言い難い状態です。

CIMG0926 (2)

ここには江戸力持ちが持った9個の力石があります。
酒問屋・内田屋の金蔵八丁堀・亀嶋平蔵などの有名人がずらり。

この神社をブログに載せる方はたくさんいても、三つ鳥居や撫で牛ばかり。
まあこの状態では力石に目が向かないのも無理はありません。

コンクリートで固められてただの残骸と化しています。泣けてきます。
CIMG0935.jpg

「馬石」に至ってはめり込んじゃってます。
CIMG0928 (2)
105×36×36㎝

「奉納 馬石 西川岸 清治郎 八丁堀 平蔵」

馬頭さんではありませんが、馬ヅラのように長い石です。

1986に伊東明上智大学名誉教授が描いた「馬石」です。

img084.jpg
「東京都墨田区内の力石の調査・研究」伊東明 1986 上智大学紀要

保存は今ひとつですが、嬉しかったことがあります。
若い巫女さんに力石の場所を聞いたら、即座に「はい。あそこです」と。
ちゃんと力石をご存知だったのです。

牛の御前さま。改めて申し上げます。

これだけの文化財的力石をお持ちですから、
今度改築するときには、ぜひ、それなりに美しく保存していただけたら、

江戸の華が「モオー」ひとつ開きます。


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コメント

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思いやり

石の一つ一つに思いやりがこもっていて、文章が優しく温かく懐かしい。
力石の種が尽きないのもまたすばらしい。
日本中の力石を拾い上げて見せてくださいな。

No title

ヨリックさま
温かさがいっぱいのコメント、ありがとうございます。

素人がただ石に魅せられて始めたものですから、間違い、勘違いも多々あると思います。こんな石があるよと知らしめたい一心でやっています。

私に限らず、日本人の「石」に対する感情は特別ではないでしょうか。
庶民の民俗遺産の中では特にマイナーなものといわれ冷遇されている力石に対しては、余計、力が入ってしまいます。

このブログをご覧になって「ありましたよ! やっと見つけましたよ!」とご報告下さる方が増えました。本当に嬉しいです。また師匠の高島教授や先輩研究者からたくさん助言をいただいています。このご縁、本当にありがたいです。

これからも固い「意志」で、がんばります。

m(__)m

\(^o^)/
いつも有難うございます。

わーい、もうすぐ訪問者数が1万人の大台ですね。
後2日ぐらいでしょうか?
キリ番になれたらいいなと思う今日この頃です。

力石のこと、神社の方に聞いても「さぁ聞いたことないですねぇ」という返事が多いです。

よく聞いてみると、「重軽石」のことだと思っているようです。注意しないといけないですね。

無責任男 拝



No title

minekazeyaさま
いつもありがとうございます。

マイナーな石のマニアックなブログで、ご訪問の方がゼロの日もありましたが、とにかく知って欲しい一心でコツコツ。

一万人なんて夢みたいです。
ぜひキリ番になってください。

すっかり年を食ったのに「姫」を名乗るのは恥かしいなあと思い始めていますが、気持ちだけは初々しくいきたいと思っています。

神社の方に「力石は?」とお聞き下さるのはとてもありがたいです。そうすることで関心をもっていただけますので。

今後ともよろしくお願いいたします。

雨宮清子(ちから姫)

昔の若者たちが力くらべに使った「力石(ちからいし)」の歴史・民俗調査をしています。この消えゆく文化遺産のことをぜひ、知ってください。

ーーー主な著作と入選歴

「東海道ぶらぶら旅日記ー静岡二十二宿」「お母さんの歩いた山道」
「おかあさんは今、山登りに夢中」
「静岡の力石」
週刊金曜日ルポルタージュ大賞 
新日本文学賞 浦安文学賞