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由比の力石めぐり③

由比の力石
04 /11 2016
由比・阿僧の瘤山観音堂で、木の根に集められた力石を確認したあと、
私たちは次の目的地「白井沢」へと向かいました。

白井沢の力石の情報をくださったのは、青木仁さんという農家さんです。
早朝にも関わらず、青木さんは笑顔で、
「今、案内します」
それから高島教授の軽自動車をチロッと見て、
「うーん。うちの車で行くかね?」

先生、慌てて、
「いや、これで行きます」
それでも青木さん、
「うーん。道悪いでね、うんと悪いでね、慣れてない人にはどうかなあ」

結局、久代さんだけ青木さんの車へ乗り換え、
私は高島教授の軽自動車に乗り込んで、いざ、山のテッペンへ。

青木さんが言った通り、軽一台やっとの山道。おまけに左側は断崖です。
そのざらざらのクネクネ道を登り詰めたところに小さなお社がありました。

青木さんにご案内いただいた第六天神社です。
img009.jpg
「阿僧の歴史」(望月良英 私家本 2016)より

第六天神って時々見かけますが、今一つわからない神様です。
なにしろ仏道修行をじゃまする天の魔王ですから。
織田信長がこの魔力に魅せられて信奉したそうですが、
結局、本能寺であえない最期を遂げてしまいました。

でもこの魔王さん、お釈迦さまが涅槃に入られるとき駆けつけて、
大乗仏教とその信奉者を守護することを誓ったそうです。

青木さんによると、
ここの第六天神社には、武士の守り本尊の摩利支天
山の神様が合祀されているとのこと。

第六天神社の力石です。
CIMG0034.jpg
     
ここもまた木の根枕の力石  雨宮清子

力石がこんなにたくさんあるってことは、
かつてここには多くの若者たちがいて、力比べに興じていたってことですよね。
それを「魔王」さまがご覧になっていた。

そういう日々はもう来ないんだよなあとちょっぴりセンチメンタルになりつつ、
青木さんの車を先頭に、
再びざらざら道をつんのめるようにして下りました。

でも有難いことに、
望月良英さんが、
郷土史「阿僧の歴史」」にその痕跡を永久に残してくれました。

これです。
img011.jpg

今は人々から忘れられ、みんなで寄り添って眠る力石ですが、
この郷土史に記録されたことで、
その存在を郷土のみなさんに再確認していただくことができました。


そして私が、昔の人たちが残してくれた郷土史の中で力石と出会い、
それを元に尋ね歩いたように、
「阿僧の歴史」を見た「もの好き」な若者がこの石に会いにくる、
そんな日がきっとあるような、そんな気がいたします。
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雨宮清子(ちから姫)

昔の若者たちが力くらべに使った「力石(ちからいし)」の歴史・民俗調査をしています。この消えゆく文化遺産のことをぜひ、知ってください。

ーーー主な著作と入選歴

「東海道ぶらぶら旅日記ー静岡二十二宿」「お母さんの歩いた山道」
「おかあさんは今、山登りに夢中」
「静岡の力石」
週刊金曜日ルポルタージュ大賞 
新日本文学賞 浦安文学賞