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赤字でも電車が走っていたころ

世間ばなし➁
07 /01 2023
近ごろ、廃村や限界集落の動画をよく見るようになった。

人は道や川沿いに住む。
しかし、その場所が永遠でないことは、古代の遺跡からも見て取れる。

運搬手段が人力から動力に変わることで、運搬方法も川から陸へ移り、
その陸上の道も効率の良い新しい場所へ付け替えられる。

道の移動は当然、人の移動に直結し、取り残された村は過疎化が進む。

かつて静岡へ嫁いできた女性から聞いた言葉が、今も脳裏に浮かぶ。

「家は豪雪地帯なので母からよく言われていたんです。
あなただけは雪の降らないあたたかい町へ嫁ぎなさいって」


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広島と島根の県境の村で住人から聞いた話も忘れられない。

「町の人は電気でも家の修理でも業者に頼めるが、
こういう所はなんでも自分で出来なければ住めないんだ。

町の動物愛護団体が熊を殺すなって言う。熊の怖さを知りもしないで。
料理の匂いを嗅ぎつけた熊が換気扇に腕を突っ込むんだ。バリバリって。

高速道路ができたら、環境保護のやつらが自然破壊だと抗議に来た。
そのとき俺、言ってやったんだ。
だったら当然、あんたらは道なき道を歩いてここまできたんだろうね。
もし、この道路を使って車で来たのなら、
あんたらの言うことは矛盾してるんじゃないかって」


町へ続く道は山村の命綱だが、念願の便利な道ができたら、
今度はその道を通って住民が村を出て行くようになった、

ということもよく聞いた。

高度経済成長期にはそれが顕著になった。
それは道のせいだけではない。


燃料革命が起き炭焼きは廃業を余儀なくされ、
木材の輸入で山村の林業が立ちいかなくなって、
暮らしていけなくなったからだ。


人間ってやつは、おのれの家づくりや村づくりにすごい執念を燃やす。
でもそれは、
そこに豊かな暮らしを約束してくれる「食べていく手段」があってのこと。

それが立ちいかなくなれば、そこを離れていくしかない。

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小学生の頃、先生が言った。
「人のあまりいない村になぜ、電車が走っているのかわかりますか?」

人が少なければ乗る人も少ない。少なければ鉄道会社は赤字になる。
それなのに赤字でも電車を走らせるのはなぜかと、
先生は子供たちに問うた。


「それはね、
どこに住んでいても、みんな同じ恩恵を受ける権利があるからです」

もっと子供にわかりやすい言い方をしたが、
とにかくそういう趣旨のことを言った。


「都会ではたくさんの人が電車を利用します。だからたくさん収益があります。
そうしたところのお金を、あまり人が乗らない田舎にあてているのです。
みんな平等に暮らすためです」

子供の私はすごく感動して、日本って何んていい国なんだろうと思った。


その後、国鉄が民営化されて赤字路線は切り捨てられた。

独立採算制などという、目先の収益やすぐに形として見える功績を優先させ、
病院や大学、研究機関などの長期的展望を無価値とするような制度も出来た。
そうして、
なんでもお金で価値を決める社会が加速していった。

加速していくにつれて格差が広がり、弱肉強食が当たり前になり、
多様性が希薄になって短絡的思考の人間が増えていき、
急速に人々から優しさが消えていった。

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文明を追い求めること。
それは当たり前のことかもしれないけれど、
今でもなんだか割り切れない自分がいる。
遠い日のあの教師の言葉が、私の頭を占める。

今、日本の食料自給率は38 %だという。18%だという人もいる。
エネルギー自給率は11・8%。

海に囲まれ森や水資源に恵まれた国なのに、
国民は高い技術と志しと物づくりが得意な努力家揃いなのに、
今や木材も燃料も魚も肉も野菜、果物も外国から買っている。

家畜の飼料も畑の種も肥料も。

店頭には安い外国産が大量に並んでいる。

紛争や災害が起きて輸入がストップしたら、
日本はたちまち飢餓地獄になりそうだ。

日本人を全滅させるには爆弾なんて必要ない。
食料の輸入をストップさせれば、それでコトが済む。


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どうするんだろう。
政治家たちはちゃんとこの国のことを考えてくれているんだろうか。

私は、日本の国で出来た食べ物を、日本の海で穫れた魚を、
食べたい、食べ続けたい。


廃村や限界集落の動画を見ながら、想像するんです。
山や田んぼや牧場や果樹園や海で、生き生きと働く大勢の人の姿を…。

山の木が健全なら水もまた豊富に流れる。
川上が川下を豊かにするということを、昔、林業家から聞いた。
だが、
もはや「ここですべてが循環していた暮らし」は崩壊した。

今は、放置された山や畑や田んぼばかり。
自然と人が織りなしたあの生き生きとした時代は、もう来ないのだろうか。

グローバル社会って、結局、植民地主義と同じなんだと思った。

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今も繰り返される大人たちの戦争、難民船、飢餓の子どもたち。

そんな時、思い出すんです。
小学生だったころ、先生から聞いた「収益の平等分配」の話を…。
そういう優しかった時代を…。

時代錯誤と笑われようとも。


ーーー

まな板を買い替えました。
前のは天竜川上流部へ行ったとき購入したまな板で、
地元産木材を使い地元の方が作ったもの。10年使った。

今度のは大井川上流部の、やはり地元産木材で地元の方製作。
檜の芳香が広がる中で料理をしております。作った人の心を感じながら。

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コメント

非公開コメント

まな板が素敵!!

檜の芳香が広がるなかでの調理、それは楽しそう。
母宅のまな板が酷い状態なのですが、年を取ると
ささいな変化を嫌うので、そのまんまです💦
しれっと、新品を置き換えちゃおうかとも思うのですが。

BUSYBEE-GAEIさんへ

おはようございます。
まな板一つでも長い間、共に歩んできたと思うと私でもなかなか手放せないんです。でも、もうさすがに汚れて…。

新しいのを使い始めたとき思ったんです。
「畳と女房は…」っていうけど、まな板と亭主も新しいほうがいいなあって。あの芳香ですから。でもそれも最初だけ。最初は鼻炎になりそうなくらいすごくて、居ながらにして森林浴だーいなんて悦にいってましたが、今は少々薄れました。でも白い面と木目を見ると、やっぱり清々しくなります。

No title

ちから姫さん!こんにちは!

本当にそうですよ。

社会の基盤がなんて脆弱になっていくのだろうか、お金があれば何でもできる、何でも手に入るという幻想を未だに捨てきれず100年前の政治や価値観を引きずって変えることができない、したくない人たちが権力の座にしがみついている。

学校で「教えてくれる」ことの、真逆の世界が目の前に広がっているのが現在の日本ですね。「いじめ」はいけませんと言いながら、非正規、女性、子ども、老人、障碍者・「難民」・・マイノリティへの弱い者いじめが横行しているじゃあないですか。首相が大ウソをついても知らん顔、しかも臭いものにふたをする周到な準備と力技まで駆使して、率先していじめてますよ。

社会の無関心・無理解にもいい加減腹が立ちます(;´・ω・)

今日は、敷島神社の田子山富士塚のお山開きに行ってきました。おめあては、そうです坂本さんです(笑)登山が禁止になる雨の中、ビデオで観たとおり、元気に無事に90kgの力石を担ぎ上げ皆さんの拍手を浴びていました。

その後、ごあいさつさせていただき、短時間ですがお話もすることができました。担ぐことができる石が無いのが悩みの種で、へいへいさんのブログ記事を見て、担ぐことに出来る石探しをしているということでした。今日の様子は動画撮影しましたので、近日中にアップしたいと思います。

それはいいのですが、山開きのイベントに来ていた地元選出の国会議員の方(S氏)が「~戦争で勝つためには相手の文化をつぶす事が大事。私たちは文化をつぶされないように大事にしていかなければならない!」と暴言を吐いていました。お祭りのあいさつに来てこんなセンスのない見当違いの「文化保護論」を恥ずかしくげもなくしゃべることができるとは。せっかくの祭典を台無しにしたな。

torikeraさんへ

ありがとうございます。
こんな時代遅れのことを書いて、と笑われるのを覚悟で書きましたが、賛同していただいて嬉しかったです。時代が進むにつれて大事なものを捨ててきたんではないかと思えて仕方がありません。

いじめの横行と隠ぺいも日常茶飯事。被害者が命まで奪われても責任ある者は保身に走るし。私、芸能人が大嫌いなんです。昔は芸能ニュースは色モノ扱いだったのに今は主流になって、まるで芸能人が社会常識のモデルみたいな錯覚を起こさせるニュースばかり。特にテレビ芸人の跋扈はいやでたまりません。
日本人の劣化がひどいと外国人や外国在住の日本人からたびたび指摘されますが、中でも政治家の劣化はダントツだと思っています。みんな揃って「ジャイアンに媚びるスネ夫」ですもんね。
お山開きに来た政治家さん、これまたひどすぎます。

坂本さんに会えたんですね。よかった!
動画、ぜひ、ご一報ください。



こんにちは。

今の鉄道会社は、利益優先の株式会社ですね。
駅ビルにして稼ぐのが主流のような。
地方の路線は切り捨てが経済政策のようです。

私の学生時代、もう65年近く前ですが、
東北へ周遊券で遊びに行った時でも、
地方の路線は、早朝は行商のおばさんが乗ってるくらいで、
殆ど人が居なかったようでした。
東北地方の汽車、まあ夏休みの平日なのか、
何処に行ってもガラガラ。都内の電車とは雲泥の差でした。

国鉄なので、雨宮さんの全国平等の話、納得した次第です。
本線の急行は、それなりに満席でしたが。

リニア鉄道も東京~名古屋で建設でした。
国際的に特許などの競争があり、日本で開発が必要ですが、
(中国が覇権を狙っているようで)
これも東海鉄道会社が儲かっているからできるのでしょう。

新しいまな板で、料理がおいしくなりますように♪






one0522さんへ

誰も乗らない路線に電車を走らせるのは無駄だとはわかっているんですが、なんだか割り切れないというか…。それに車社会ですものね。でも電車の旅は楽しかったです。青春切符はよく使いました。みんな昔話になってしまいましたが。

リニアもすったもんだしていますが、南アルプスの地下を通るので静岡県民が恩恵を受けることはないんです。ただ大井川上流部の集落はいろいろ影響が出るようです。大井川はダム銀座といわれるほどダムがつくられていて、取水した水は巨大な送水管で一気に下流に流してしまうので川が干上がって…。
それでお茶に必要な霧が発生しなくなったり洪水が起きたりで、行政と流域住民が「水を返せ」という運動をしました。取材で住民の声をお聞きしましたが、切実な訴えが今も忘れられません。

まな板、楽しく使ってます! やっぱり新しいのは気持ちがいいです。でも檜ってこんなに匂いが強かったんだと改めて思いました。以前は檜の削り滓をもらってきてお風呂に浮かべて楽しんでいました。

雨宮清子(ちから姫)

昔の若者たちが力くらべに使った「力石(ちからいし)」の歴史・民俗調査をしています。この消えゆく文化遺産のことをぜひ、知ってください。

ーーー主な著作と入選歴

「東海道ぶらぶら旅日記ー静岡二十二宿」「お母さんの歩いた山道」
「おかあさんは今、山登りに夢中」
「静岡の力石」
週刊金曜日ルポルタージュ大賞 
新日本文学賞 浦安文学賞