ドナーで生まれた子
盃状穴②
数回で終わるはずだった「盃状穴」考。
私の悪いクセが出て本題を忘れて、またもや興味は四方八方に。
どこまでいくかわかりませんが、どうぞ、お付き合いください。
子どもにまつわる話から、こんな本も読んでみました。
「ドナーで生まれた子どもたち」
サラ・ディングル (株)日経ナショナル ジオグラフィックス 2022

作者はオーストラリア人で、ウォークリー賞ほか多数の受賞歴を持つ
オーストラリア協会の調査報道記者兼司会者。
白人の父親と中国系マレーシア人の母親との間に生まれたが、
父親は実父ではない。
つまり、著者のサラ自身が、
「ドナーで生まれた子ども」だったのです。
私はこの本を読むまで、
ドナーとか精子提供とか不妊治療などという言葉は知っていても、
その内実について興味すら持たないままできた。
というか、子供が欲しい人の福音みたいに思っていた。
だが、この本の副題にもあるように、
これが「精子・卵子・受精卵の売買」で、
とても崇高な医療とはいえない内実に、ただただ驚かされた。

サラは自身がドナーで生まれた子、DC児であることを知って以後、
実父探しに奔走します。
血のつながりがなかった「社会学的父親」は、
サラがDC児であることを知る前に他界。
精子提供を受けた実母は、相手のことなど何ひとつ知らなかったから、
すべてが手探り状態だった。
自分はいったい誰なのか関係先に聞いても、だれもが口を閉ざす。
真実を知りたいと願うDC児は、自分のことなのにいつも蚊帳の外だ。
そうした困難な状況の中で、明るみに出てきたのは、
不妊治療クリニック(国・私立・個人)のずさんな医療記録管理と、
命の売買の汚い実態だった。
サラはそれを、
「ビジネスとして命の過剰生産」と、断罪した。
不妊治療を標榜する医療機関では、
一人のドナーから、10人から500人という大量の子どもを作っていた。
担当医が診療の合間に、自分の精液で間に合わせることも多々あった。
こうして愛情とは無縁のコピー人間が大量生産され、
知らぬ間に悪い遺伝子が広範囲に広がり、近親結婚が起きた。
実際、サラの知人がそうだった。

実父探しを始めて10年後、
サラはついに「生物学的父親」を突き止めた。
彼の告白によると、
当時、3か所の病院で精子を提供。一つの病院だけで200回も提供していた。
その対価は約9000ドルだったという。
まさに、「ビジネスとして命を過剰生産」していたのです。
「全部妊娠に成功したとすると、自分の異母きょうだいは4000人になる」
と、サラは戦慄する。
事実、その後、サラの異母姉妹が次々、判明した。
だが、生物学的父親の精子提供は「4000人」で打ち止めになった。
理由は、エイズが大きく報じられるようになり、
彼はゲイだったため、精子提供を拒まれたからだった。
2019年、サラ・ディングルは国連で、
「命の大量売買」の実態と改善を訴えた。
しかし、本の末尾にこう記している。
「いまだに当事者のDC児は何も知らされず、隠され、
法整備にも反映されていない」と。

著者のサラは育ててくれた父からの愛情は、しっかり受け止めていたし、
突き止めた生物学的父親には、愛情など感じなかった。
だがそれでも、自分は何者かを知りたかったし、それは権利だと主張した。
だから世間に知らしめた。
「命のビジネス」の暗部と改善を…。
日本ではどうなんだろうか。
「子は宝」と言いながら、
間引き、命の選別、DC児のどれにも共通しているのは、
主役である生まれ出る子どもたちに、選択権も生存権もないということだけ。
考えさせられました。

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私の悪いクセが出て本題を忘れて、またもや興味は四方八方に。
どこまでいくかわかりませんが、どうぞ、お付き合いください。
子どもにまつわる話から、こんな本も読んでみました。
「ドナーで生まれた子どもたち」
サラ・ディングル (株)日経ナショナル ジオグラフィックス 2022

作者はオーストラリア人で、ウォークリー賞ほか多数の受賞歴を持つ
オーストラリア協会の調査報道記者兼司会者。
白人の父親と中国系マレーシア人の母親との間に生まれたが、
父親は実父ではない。
つまり、著者のサラ自身が、
「ドナーで生まれた子ども」だったのです。
私はこの本を読むまで、
ドナーとか精子提供とか不妊治療などという言葉は知っていても、
その内実について興味すら持たないままできた。
というか、子供が欲しい人の福音みたいに思っていた。
だが、この本の副題にもあるように、
これが「精子・卵子・受精卵の売買」で、
とても崇高な医療とはいえない内実に、ただただ驚かされた。

サラは自身がドナーで生まれた子、DC児であることを知って以後、
実父探しに奔走します。
血のつながりがなかった「社会学的父親」は、
サラがDC児であることを知る前に他界。
精子提供を受けた実母は、相手のことなど何ひとつ知らなかったから、
すべてが手探り状態だった。
自分はいったい誰なのか関係先に聞いても、だれもが口を閉ざす。
真実を知りたいと願うDC児は、自分のことなのにいつも蚊帳の外だ。
そうした困難な状況の中で、明るみに出てきたのは、
不妊治療クリニック(国・私立・個人)のずさんな医療記録管理と、
命の売買の汚い実態だった。
サラはそれを、
「ビジネスとして命の過剰生産」と、断罪した。
不妊治療を標榜する医療機関では、
一人のドナーから、10人から500人という大量の子どもを作っていた。
担当医が診療の合間に、自分の精液で間に合わせることも多々あった。
こうして愛情とは無縁のコピー人間が大量生産され、
知らぬ間に悪い遺伝子が広範囲に広がり、近親結婚が起きた。
実際、サラの知人がそうだった。

実父探しを始めて10年後、
サラはついに「生物学的父親」を突き止めた。
彼の告白によると、
当時、3か所の病院で精子を提供。一つの病院だけで200回も提供していた。
その対価は約9000ドルだったという。
まさに、「ビジネスとして命を過剰生産」していたのです。
「全部妊娠に成功したとすると、自分の異母きょうだいは4000人になる」
と、サラは戦慄する。
事実、その後、サラの異母姉妹が次々、判明した。
だが、生物学的父親の精子提供は「4000人」で打ち止めになった。
理由は、エイズが大きく報じられるようになり、
彼はゲイだったため、精子提供を拒まれたからだった。
2019年、サラ・ディングルは国連で、
「命の大量売買」の実態と改善を訴えた。
しかし、本の末尾にこう記している。
「いまだに当事者のDC児は何も知らされず、隠され、
法整備にも反映されていない」と。

著者のサラは育ててくれた父からの愛情は、しっかり受け止めていたし、
突き止めた生物学的父親には、愛情など感じなかった。
だがそれでも、自分は何者かを知りたかったし、それは権利だと主張した。
だから世間に知らしめた。
「命のビジネス」の暗部と改善を…。
日本ではどうなんだろうか。
「子は宝」と言いながら、
間引き、命の選別、DC児のどれにも共通しているのは、
主役である生まれ出る子どもたちに、選択権も生存権もないということだけ。
考えさせられました。

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