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初笑い

ショートショート
02 /06 2024
夫「京都へ出張だ」
妻「いつからですの?」
夫「明日の午後から。会社からそのまま直行する」
妻「まあ、ずいぶん急なこと」
夫「すまんな。リモートでは埒があかない案件なんだ。翌日には帰る」


夫「もしもーし。あ、オレ。まだ京都だ。
  取引先との話がまとまらなくて一日伸びた。すまん」
妻「まあ。じゃあ、お帰りは日曜日ね。ごくろうさま」
夫「すまんね。土産、忘れずに買っていくから」


夫「ただいま。最終の新幹線にギリギリ間に合った。はい、お土産」
妻「まあ、うれしい」
夫「いつも寂しい思いさせちゃってるしな。奮発しちゃったんだぞ」
妻「あれ? なにこれ?」
夫「なにこれって、なんだい」
妻「お父さん、確か京都へ行ったんですよね」
夫「そう言ったじゃないか」
妻「でもこのお土産、北海道の…」
夫「えっ! そ、そんなことは…。変だな」

妻「さてはあなた! 出張じゃなくて不倫旅行だったんでしょ !
  確かにリモートじゃ埒が明かない案件よね、そうでしょ!」

夫「お答えは差し控えさせていただきます」
妻「なに政治家みたいなこと言ってんのよ!」
夫「し、しかし、お前が疑念を抱くような状況になったことは…」
妻「あったんでしょ! その彼女と」
夫「はぁー、どこかでお会いした記憶があるようなないような…」
妻「あ、そう。
  あなたって、少なくともそんなに美男子とは言わんけれども、
  くたびれた中年男ながら、若い女性を引き付ける力があるんだから、
  たいしたもんよ。
  そこでひと言。ほ~、このおじさん、やるねぇ」
夫「どのような声もありがたく受けとめております」


夫婦の珍問答を聞いていた金次郎さん、思わず倒れてしまいましたとサ。

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雨宮清子(ちから姫)

昔の若者たちが力くらべに使った「力石(ちからいし)」の歴史・民俗調査をしています。この消えゆく文化遺産のことをぜひ、知ってください。

ーーー主な著作と入選歴

「東海道ぶらぶら旅日記ー静岡二十二宿」「お母さんの歩いた山道」
「おかあさんは今、山登りに夢中」
「静岡の力石」
週刊金曜日ルポルタージュ大賞 
新日本文学賞 浦安文学賞