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「俺はリニアには乗らない」②

世間話③
08 /30 2023
大井川の水源である南アのトンネルについて、静岡新聞から拾う。

「南アのトンネルは山梨県
(富士川水系)、静岡県(大井川水系)、
長野県(天竜川水系)の3県にまたがっている。
このうち2県は橋の上を通過。
川の直下のトンネルを通るのは静岡県だけ。


静岡工区は標高が高いため、トンネル内に湧き出た水は、
山梨県と長野県へ流れ、大井川には戻らない。
それで県では大井川に戻すように求めていた」

大井川鉄道の車窓より見た大井川上流。寸又川との合流地点。
CIMG4808.jpg

JR東海のアセスメントでは、
工事完了後も大井川の流量は毎秒2トン減るとあるが、
「たかが2トンと言うなかれ」


「生活用水や農業用水を大井川に頼る中下流の8市2町の62万人分の
水利権量にも匹敵する膨大な量だ」と、山本義隆氏はいう。

静岡県のHPによると、
「JR東海から、工事中にトンネルから流失した水と同量を同時期に
大井川へ還元するため、田代ダムの取水制限をしたいと提案された」とある。

「田代ダム」というのはこれがまたややこしくて、

場所は静岡県にあって、大井川から取水して、
山梨県にある東京電力の発電所まで送水しているという

東京電力のためのダム湖。


ということは、このダム湖を作る前は、
ここの水は全部、大井川に流れていたってことになる。

で、JR東海は今後、その東電と話し合うとのことですが、
話し合いがうまくいったとしても、この「取水制限」はあくまでも工事中だけ。

工事完了後は「オラ、知ィーらね」になるというのだ。


CIMG4821.jpg

多くの媒体で「真っ赤なウソをつく川勝知事」などと
実名で知事批判を展開している地元新聞の元・記者の小林一哉氏は、
「大井川が渇水して水飢饉に見舞われたことはない。
なのに知事は虚構まみれの「命の水」に固執している」と主張するが、

長年、地元の記者だったという人が、
かつての「水返せ運動」を知らないはずはないのに。

「真っ赤なウソをつく」「虚構まみれ」は、どっち?
と思ってしまいました。


「水返せ運動」は1971年ごろから上流の住民たちから始まり、
ダムを造るごとに川への影響が中流域へ拡大。
1980年代後半をピークに約20年間続いた。
水返せ
「よみがえれ 大井川」静岡地理教育研究会編 古今書院 1991より

あれこそ、ダムの取水で川が干上がり、
困り果てた流域の住民たちと自治体が、
電力会社
(中部電力)を相手に起こした「命の水」の闘いだったのに。

住民と町長、議員、町役場が一体になって運動を起こしたことは珍しいことで、
この「渇水」がそれだけ切実な問題だった証拠です。


河原砂漠になった大井川で「水」の人文字をつくり、
「水があって川は、はじめて川といえる」と訴えた。
人文字
同上。写真は表紙の一部。

この住民運動で中部電力はようやく、塩郷ダムで毎秒5トンの放流を
約束したが、取材に訪れた私に地元の方が言った。

「まだまだ足りません。天竜川のような川下りのできる川に、
魚がいっぱい住める川に…。そう願っていると新聞に書いてください」


リニアでは、田代ダム湖の取水制限をずっとしなければ、
そのまだまだ足りない川の水を、さらに毎秒2トン減らされるんですよ。


こちらは最近の出来事です。
大井川下流の島田市で、国交省が行った護岸工事で水が出なくなった。
2020年工事着工。終了したのは昨年。だが水は戻らない。

損害を被った住民たちが国交省に掛け合うも、責任逃れに終始。




「今まで大井川で水枯れなんてなかった」「”命の水”発言は虚構まみれ」
「水で騒ぐ知事はおかしな人」、そう言っている人たちが、
この動画の被害者たちに寄り添って行動・発信した話は聞こえてこない。

知事攻撃の急先鋒の小林氏はこの島田市出身だそうだが、
同郷の人たちのために奔走しただろうか。

それにしてもこの小林氏は、なぜ執拗に知事を攻撃しているのだろうか。

ブログ「リニア中央新幹線…」のブログ主さんは、
発言を精査して「詭弁」と断じているが、なるほどと思いました。


大井川鉄道の日本唯一のアプト式列車
もとは水力発電所建設用の資材運搬のために施設されたトロッコ。
私が南ア登山の折に乗ったときも、簡単な屋根と吹きさらしの窓の
トロッコそのもので、背を丸めて大井川を眼下にゴットン、ガタガタ…。
CIMG4822.jpg

大井川は全長168㎞。
流域には14か所のダムと20か所の水力発電所がある。

ここを訪れた人が、
「大井川に水がないって言うけど、あるじゃないか。あんなに満々と」
というのは、ダム湖の水を見て言っているのでしょう。

発電に使った水は川に戻さず、巨大な導水管で次の発電所に送るため、
川にはわずかな水しか流れないんです。
だから常に渇水状態のため、節水制限が起きている。

中・下流域には410もの企業があるから、水の減少は死活問題です。

「2018年から19年には147日間も制限されたため、牧之原のお茶が枯れ、
企業の生産活動に影響が出た」
(静岡新聞)

江戸時代には「越すに越されぬ大井川」と謳われた川だから、
手つかずなら節水制限など起こりようがない。なのに、水で苦しめられる。


こういう県民に知事が寄り添うのは当たり前のことではないですか。

アプト式列車車内
CIMG4800.jpg

「リニア…」の著者・山本氏はこうも言う。

「南アルプスのようなプレートが押し上げられ、断層が重なった地下では、
一度岩盤に穴を開けると水は永久に抜け続けるので、
その影響は計り知れない」と。

水は低きに流れるから、
長野や山梨に流れて大井川へは永久に流れなくなる。
そうなったら、流域住民は生きていけません。だから「命の水」なんです。

水力電力に水を取られ、今またリニアに取られようとしている。
踏んだり蹴ったりではないか。

南アルプスは100万年前にできた山。
この山塊は、
100万年分の氷雪が沁み込んだ巨大な水がめです。

その大自然の貯水池に穴をあける。

そのことこそ、科学技術で自然を征服するのが進化だと思い込んでいる
「人間の驕り」「自然への冒とく」ではないかと思います。


大井川上流部の茶畑
CIMG4823_20230821195812606.jpg

あれまッ!と思うことがまだある。

2016年、当時の安倍首相が閣議決定も閣議了解もしないまま独断で、
JR東海に3兆円の融資を決めた。
(準・国策事業への格上げ)

これが「無担保で金利は0.8%という低金利で、返済は30年後から」
という破格の優遇。
この約束をしたお二人はもう鬼籍に入られてしまったが、
返済が始まる22年後の2045年には果たしてどうなることやら。


こうした大規模建設の費用は、
最終的には天文学的に膨れ上がるのは、今までの例が示しているから、
ここもそうなるかもしれません。

準・国策事業だから不足分は国民の税金で賄われますから、
リニア問題は決してよその出来事ではなく、全国的な問題なんです。

JR東日本の元・会長が言った「ヘリウム」は、リニアには欠かせないもので、
アメリカから買うしかなく、供給量も少なく高価。
消耗品だからそれをずっと買い続けなければならないそうだ。

また「大量の電力が必要」なため、
原発の再稼働や新設をするしかないともいわれている。
JR東海はリニアは「クリーン」「省エネ」と胸を張るが、そうだろうか。

化石燃料はCO2を出して地球温暖化の元凶と言うが、
「使用済み核燃料の処理では全工程で大量の石油を使う」という。

ならばその原発の電力を大量に使うリニアは、
間接的にCO2を大量に吐き出すわけで、「クリーン」というのはウソになる。

国民に「エコ袋持参」を義務付けたあの大号令は、なんだったのか。


下は30年前、私が書いた大井川鉄道の新聞記事です。
蒸気機関車の機関士さんが汗びっしょりで言った。

「蒸気をあげるまで3時間もかかるんだ。そりゃあ電車の運転の方が
うんと楽だよ。だけどSLは生き物だからね。毎日肌をあててると可愛さが増す」

蒸気機関車「C11 227」です。1975年に北海道標津線から大井川鉄道へ。
右は子供たちに大人気の「トーマス号」
孫たちもこの夏、遠方からはるばる乗りに来ました。
img20230821_20160897.jpg h_main_pc_01.jpg
 
見ているだけで童心に帰る楽しいHPです。

JR東海の会長さんも社長さんも、
お孫さんを連れてどうぞ、トーマスくんに会いに来てください!


「大井川鐵道・きかんしゃトーマス」

費用の問題ばかりではない。
強い電磁場の人体への影響や、今後必ず起きるとされている南海トラフの
巨大地震、富士山噴火も大きな不安材料だ。


(補聴器を装着している私は、電子レンジの電磁波でも影響が
でるくらいだから電磁力で走るリニアには乗ることはできない)

JR東海では、その地震の折に大活躍するのがリニアだと胸を張るが、
地震や天災の時、リニアだけが無事だという保証はどこにもない。


大井川鉄道・蒸気機関車「C11 8」の釜の火。
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山本氏はいう。
「東日本大震災に力を発揮したのは、
普段は経営のお荷物のように扱われていたローカル線だった。
ハイテクよりローテクのほうが自然災害に強かったのです」


さらに静岡県立大学の先生からはこんな話も。

「リニアが地震などで緊急停車した時、乗客は2か所の非常口まで3㎞の
斜坑を徒歩で登らなければならない。

非常口は千石で標高1330m、西俣で1530m。
南海トラフの場合、県内は来訪者や新幹線、在来線の乗客の救助で
手一杯だろうから、リニアまで手が回らない。


非常口へ辿り着いても、そこから最寄りの集落までは30~40㎞もある。
冬なら低体温で死亡の恐れもある」

=静岡県立大学特任助教授・西 恭之氏メモ。
 報告者はMAG2 NEWS・小川和久氏。

小川氏は指摘する。
「メディアはこうした人命に関わることにはいっさい触れていない」

このメモは静岡県有識者会議で配布されたものだそうです。


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「俺はリニアには乗らない」①

世間話③
08 /27 2023
リニアについて、「硬い、長ったらしい」記事になります。
全くの素人の私が取り上げるテーマではないと重々承知していますが、
当事県の県民の一人として思い切って書いてみました。

舌足らず、知識不足のことも多々ありますが、ご理解ください。

       ーーーーーーーー

リニアは静岡市の最奥部、3000m峰が連なる南アルプスの地下を通る。
だから、静岡県人には何のメリットもない。

メリットはないのに、デメリットだけはたくさんある。
水源の破壊、残土、動植物への影響、大井川の水の減少・汚染、
どれも影響が大きい。


南アルプス塩見岳への初日。このころは疲れ知らずでよく歩いた。43歳。
この4か月後、ガンで2度手術。一か月の入院。
img20230821_09384237.jpg

もう一つの問題はJR東海の静岡県冷遇。いわゆる「静岡県飛ばし」だ。
これは石川嘉延・前静岡県知事時代からそうだった。

石川知事時代、JR東海に要求した案件はことごとく拒否された。


「新幹線ひかりの静岡駅への停車の増加」
「可能な限り、静岡駅もしくは県内1駅にのぞみを停車していただきたい」
「静岡空港予定地の地下に新幹線が通っているから、そこに新駅の設置を」


しかしJR東海はことごとくはねつけた上、追い打ちをかけるように、
ひかりとこだまの特急料金をのぞみと統一するとした。

これはのぞみが止まらない静岡県民の負担増となった。
  
JR東海のあまりの傲慢さ、静岡県軽視に当事の石川知事は怒り、
「県内を素通りするなら、のぞみ通行税を徴収する」と、突きつけた。


「地下に新駅を」の要望に対してJR東海は「技術的に無理」と言ってきたが、
リニアのため、山岳地帯の1400mの地下を掘る難工事をする技術はある。
おおいなる矛盾ではないか。


さて、JR東海はそうした非礼を次の現・川勝知事へも容赦なく浴びせた。

2018年、県庁でリニアの工事による環境問題を盛んに議論していたころ、
新社長になった金子氏
(現・会長)は、県庁へは出向かず、
わざわざ、すぐ向かいの市庁舎に静岡市長を訪れたという。

そこで、市長との間で「リニア建設への協力の合意書」を結んだそうで、
姑息というか、なんともいやらしい。

この金子氏が知事を訪問したのは、社長就任の2年後というのだから、
これほど人をバカにした話はないではないか。

これではリニアがうまくいくはずがない。

だって「工事をさせてください」と頼む方が、高圧的なんだから。


明日登る塩見岳を背景に。テント泊。女二人だけの気楽な山旅です。
彼女は聴覚障がい者だが、読唇術で全く会話に支障はなかった。
塩見3

川勝知事は「リニア賛成」を早くから表明していたが、
JR東海の非礼さや環境問題や大井川の水などの問題山積で、
昨今、いささかお疲れ気味。

さらに追い打ちをかけたのが、
全国規模で、ワラワラと湧き出てきたバッシングの嵐。
ちまたで囁かれている「川勝いじめ」だ。

「真っ赤な嘘をつく知事」「川勝は中国のスパイだ」
「国策に従わない知事は国賊だから、排除する法律を作って追い出せ」
などと言いたい放題。

県民の一人として、黙って聞き流すわけにはいきません。


特に「国策」「国賊」なんていう戦前の悪しき脅し文句を、
令和の今、再び発する人がいるなんて信じられないし、おぞましすぎる。

これではどんなにメンタルが強い人でも心身がおかしくなってしまいます。

昨年まで副知事(現・静岡市長)としてリニア問題に取り組み、
工学の専門家としてJR東海に対して、毅然とした対応をしていた難波氏に、
5通もの脅迫状が届いたという。


ネットの言葉や風評を真に受けて脅す。
大物一人をターゲットにして、集中砲火を浴びせて潰しにかかる。
匿名だから誹謗中傷は際限がない。県内か県外の人かさえわからない。
その人数さえ不確かだ。


翌朝、薄明の中を登頂開始。♪なんだ坂、こんな坂、とはいえ、チト手強い。
塩見薄明の中を

私は知事を応援しています。ただし、私は「リニアいらない派」

なぜいらないのかを、
山本義隆氏の
「リニア中央新幹線をめぐって」に依拠し、述べていきます。

「リニア…」の中から抜粋します。

JR東日本の元・会長の松田昌士氏の談話
=「日経ビジネス」2018・8・20=
として、こんな記述があった。

「リニアは高価なヘリウムを使い、大量の電力を消費する。
トンネルを時速500㎞で飛ばすと、ボルト一つはずれても大惨事になる。

俺はリニアには乗らない。

だって、地下の深いところだから、死骸も出ねぇわな」

 =地元で「モグラ列車」「棺桶新幹線」と揶揄されている理由がこれ。

南アルプスのトンネルが通るのは最深度・地下1400m。長さ25㎞。
残土は静岡工区で370万立法メートル。沿線7都県で約5680万立方メートル。

こんな途方もない残土を南アの谷や源流部に捨てるそうだけど、
人ンちの山のドテッパラに穴を開けて、出た土を人ンちの水源地に捨てるって、
自分勝手もいいとこだって、私は思うんですよね。

それに自然界への畏怖っていう感覚が全然ないんだもの。

やっきりしちゃうよ、まったく。

静岡県の最大の心配事は水。
反知事派は知事を「水でゴネているおかしな人」というが、
この水は大井川・中下流域の住民62万人の「命の水」ですから、
そりゃあ、真剣になりますよ。これについては次回。


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水とともに心配なのが、残土に含まれる有害物質だ。
岐阜県には放射性物質のウラン鉱床があり、
令和4年にリニア工事の残土から、ヒ素およびフッ素が検出されたという。

静岡県HPによると、
「トンネル内から出た残土のうち、自然由来の重金属などを含む残土を
JR東海では水源地の大井川河畔藤島付近に永久存置するという。
二重の遮水シートを被せるというが、シートの寿命など明らかにしていない。
流失すれば、川への汚染は避けられない。県では懸念している」
とのこと。

古くは足尾銅山鉱毒事件や神岡鉱山のイタイイタイ病があり、
直近では、北海道で掘削していた穴からヒ素が噴き上り、
住民がヒ素中毒になるという事故があったばかり。

鉱毒などは、
ジワジワと田畑や山林や人体に浸透していくからやっかいだ。

重金属残土だけではない。あとの残土360万立法メートルは、
日本一崩れやすい「千枚崩れ」の下流・燕沢などに永久残置するというのだ。
この土砂が崩壊すれば、堰き止められた水で大規模な災害が発生する。

高山の崩壊地や水源地に多量の残土を置き、
遮水シートを被せて永久存置って、
バカも休み休み言えと言いたい。


下記の「急がば回れぢゃ」さんのブログ記事をぜひ、見てください。
残土置き場とされている地形など詳しく書かれています。

=地形については8月4日の記事に詳しい。
実名で知事攻撃を繰り返している
二人のジャーナリストも取り上げています。

「リニア中央新幹線
南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい」

「8月4日」「8月13日」の記事も、ぜひ。

人が手つかずの自然に手を突っ込んだことによって、
未知のウイルスが出現したが、それと似ているような気がします。



塩見岳から北荒川岳へ向かう途中の北俣岳分岐から蝙蝠岳へ。
ほとんどの登山者が素通り。稜線上は二人だけの天下。
紺碧の空の中を上機嫌で歩いた。
塩見1

さて、知事の一番大きな狙いは、私の憶測ですが、
静岡空港地下か付近に新幹線新駅を作ること。
その駒が「南アのトンネルの水問題」ではないだろうか。


新幹線新駅は前知事からの願いであり、
静岡県経済界からの熱望でもあると思います。

だってリニアが出来てそちらが主流になれば、
流れが東京ー名古屋ー大阪となって、静岡県は完全にスルーですから。
新道ができると人や物資の流れが変わり、集落が衰退するのと同じ原理です。


そこで、勝手な想像ですが、両者のもくろみはこうではないか、と。

知事は「新幹線新駅を作るなら、トンネル工事は許可する。
    ただし水問題は流域住民の納得のいく形で」
JR東海は「許可しようがしまいが工事は続行するし、新駅を作る気もない」


こう見てくると「国策事業」を錦の御旗に立てて、
デメリットだけを押し付けてくるJR東海の方がゴネていると思いたくなります。


無事、縦走を終えて「両俣小屋」の女性小屋番さんと。
塩見岳北俣岳蝙蝠岳ピストン~北荒川岳新蛇抜山安倍荒倉岳熊ノ平小屋三峯岳両俣小屋北沢橋まで3時間~広河原まで2時間。歩きまくった。

靴を脱いだら、ふやけた足の先で爪が2本黒くなって死んでいた。
img20230823_08462209.jpg

忘れてならないのは、
JR東海は今は国鉄ではなく民間企業。
営利企業は利益第一が命ですから時には冷酷です。

そういう私企業に対して県政の長として、
知事が県民の利益優先のため駆け引きをするのは当たり前のこと、
というのは、どなたも異論はないと思います。

で、不思議だなぁと思うのは、
県議会議員の10数人が、知事の言葉尻を捉えてネット民の如く貶めたり、
知事不信任案まで出したりする、私にはそのことが理解できないのです。

県民の豊かな暮らしと経済の活性を願うはずの県議員たちが、
静岡の山河を壊し静岡の経済に何のメリットももたらさない、
と私には思えるリニア建設なのに、なぜ、相手のJR東海に加担するのか。

「静岡県飛ばし」という衰退への道を、なぜ選ぶのか。

こうした議員たちと圧倒的な知事支持の県民との乖離が、
この問題をより煩雑にしているように思えて仕方がありません。


※参考文献
「リニア中央新幹線をめぐって」原発事故とコロナ・パンデミックから見直す
山本義隆 みすず書房 2021

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さよなら、庚申さん

世間話③
08 /24 2023
湿地帯が広がる原野に、一本の細い道があった。
その道はその先の峠へ向かう道で、人家もなく寂しいところだった。


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「麻機誌」より

ただ一つ、庚申塔が一基、上り坂にかかる手前にポツンと置かれていた。

造立は享保13年
(1728)
今から295年前の村人たちが建てた。


自然石の真ん中に「奉納庚申供養塔」。上部には「日輪」「月輪」。
下部には猿と鶏の文字。その下に「結衆」と刻まれています。

かつてここは、町の人から「異界」と言われていた寒村で、
泥田の中を腰まで浸かって田植えをしていたから、
「こいはち」という病いを発症する者が多かった。

体が腫れるのを「身肥い(みごい)」、手足が腫れるのを「足肥い」
と言った。風土病といっていたが破傷風か何かだったのだろう。

庚申さんは、昭和45年にもまだ同じ場所にありました。

img072.jpg

昭和53年、状況は一変。
時代は住宅ブームとなって、茶畑が削られ湿地帯は埋められて、
建売住宅や団地が林立する新興住宅地になった。

庚申さんの立つ場所も河川改修工事や橋の架け替えが始まり、
庚申さんは引っ越した。


工事が済んで、また元の場所に帰ってきたが、
体は3つに割れてしまったので、工事の人がコンクリートでくっつけた。

町から大勢の家族が引っ越してきたが、
庚申さんに目を留める人はいなかった。

ただそばに立つカラスザンショウの木だけが、そっと寄り添っていた。

夏には大きく枝を張り、その枝に葉っぱをたくさん生やして木陰を作り、
庚申さんをキツイ太陽光線から守っていた。


CIMG3351.jpg

そして冬になると葉を落として、
今度は庚申さんにあたたかいお日様をプレゼントした。

CIMG2909.jpg

木にはたくさんの鋭いトゲが出ていたが、
鳥たちはこの木に止まり、夏には人もまた木陰で一休みして汗をぬぐった。


CIMG3347.jpg

でも庚申さんはボロボロ。
建立から300年近くも立ったんですから、無理もありません。

苔と泥におおわれて、刻まれた文字もほとんど消えて、
ただの石になってしまいました。

それでもがんばっていましたよ。
足元に湯飲み茶碗があったから、誰かがそっと置いたんですね。


庚申塔

しばらく平穏が続きましたが、また、工事が始まりました。

川にかかる橋が古くなったのです。
それに人も車もまた増えて、狭くて仕方がありません。
バスも窮屈そうに右、左に気を付けて通り過ぎます。


無理もありません。
昭和53年の河川工事から、すでに45年も立ったんですから。

そこで道幅を広げて、大きな橋を架けることになりました。


カラスザンショウは引き抜かれました。
庚申さんの行方はわかりません。
どこかのお寺が引き取ってくださったならいいのですが…。

でももう文字も読めなくなって、ただの石になっていたので、
自然に返されたのかもしれません。

更地になった

300年間、ごくろうさまでした。そしてありがとう。

またどこかで会えるかな。
でも一人静かに眠りにつくほうが、庚申さんにとって、一番幸せかも。


と書いた数日後、

工事の方にお聞きしたら、「仮置き場においてあります」との嬉しいお返事。

でも、そのあとこんな質問が…。「庚申さんって何ですか?」
ひとしきり説明したけど、おにいさん、???

「幸せを願って、300年前のこの村の人たちが建てたものです」
と言ったら、なんとなく納得。


20230822_094907.jpg

きれいにしてもらったら、文字がくっきり出てきました。

拡大3

「なんだかわからない石だけど、撤去の時、お祓いをしてもらいました」
の言葉に、私、感動しちゃって。

これから本当の置き場所を探すとのことでした。

庚申さんのお話、ひとまずおしまい。


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女の風上にも置けない

世間話③
08 /21 2023
今日は怒り爆発だ!

ネットはまともな報道を隠すための目くらましかと思うほど、
芸能人のニュースばかりで。

芸能ニュースはキワモノだったから、昔はちゃんと分けていた。
雑誌全盛のころは芸能週刊誌やスポーツ新聞がそれを担っていたから、
買わなければ見なくて済んだ。

テレビは自分で番組を選べた。


でも今は、PCを開ければ否応なく見せられる。

整形人間を並べて、
「息を飲むほど美しい」だの「すっぴん顔でもこの美しさ」だの、
「奇跡の若さ。とてもお年には見えない」だのって。

アホじゃないの。

昔を言い募るのは、年を取った証拠だと嗤われようが私は言う。

「醜いねぇ」って。醜いだけじゃなくて「気持ち悪いよ」
「内面からにじみ出てくる美しさこそ本物なんだ」と。


凍らせたイチゴです。私の夏の飲み物の一つになります。
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この前、女性の国会議員ご一行さまの観光旅行が物議を醸していたけど、
政治家じゃないよね、この人たち。芸能ニュースの人たちだよね。
それも三流芸人の…。

芸能人なら芸があるけど、この人たちには「少子化対策」などという
中身空っぽのとってつけたような「芸」しかなかったんだから。

日本の少子化を心配してるって言いながら、なんでフランスなのさ。


自国と自国民の行く末が心配なら、
なんで国内の山村や漁村や廃村や限界集落を訪ねないの。

なんでそこに人が住まなくなったのか、
なんで子供が減っていくのか、


答えはフランスにではなく、ここにあるんじゃない。

日本の食料自給率を考えたことはあるのか。
なぜ、山が荒れ放題になり、なぜ、放置された耕作地が広がり、
牧場から牛がいなくなるのはなぜなのか。

未来ある若者たちの自暴自棄、自殺、事件が増えたのはなぜか。

そういう深刻な状況に心が痛んだりしたことはないのか。


外国から安い木材や食材がどんどん入ってくるからでしょうに。
四面、海に囲まれた島国だってのに、魚まで輸入して、
自国民を自滅へ追い立てている。

そうそう。他国の怪しげな宗教まで招き入れて。

これらはみんな、政治家が招いたことではないですか。

彼女らにそれが見えていないのは、
シッポを振る相手が国民ではないからじゃないの?


コップに凍ったイチゴをいれて水を注ぐだけ。ほんのりピンクに染まります。
いちご

山村から人が消え、田畑が荒れ、人々は難民の如く都会に集まる。
住み慣れた故郷を捨てざるを得なかったのは、
そうしなければ食べていけないから。国が地方を切り捨てたから。

今、世界の流れは、
化学工業重視の経済活動最優先や都市への一極集中は
もはや終わりだと悟り、地方への分権分散を模索してるってのに。

どうやらこの国にはそうした「先を読む」政治家はいないらしい。

「自分さえよければ」の政治家がいる限り、
林業家が苦労して木を育て、保全に心血を注いでも、
研究熱心な農家さんがどんなにいい作物を作っても、
酪農家が安心安全なおいしい肉や牛乳作りに頑張っていても、

国が招き入れた外資の前に倒れていくしかない。

他所の国では「外資に食いつぶされない法整備」をして、
自国民を守っているのに、日本はどうよ。穴だらけじゃないのさ。

そんな穴だらけの国の政治家でありながら、
「フランス料理はおいしかった」と言うしか能がないなんて、実に情けない。

「食をコントロールする者が人民を支配する」という大国に、
日本はすでに支配されてるってのに。


支配されてるってことは、生殺与奪を握られてるってことなんだよ。

税金で食べた料理を写真に撮って、自国民に見せびらかす人もいた。
精神年齢はいくつなの?

でもよく覚えておくがいい。「食い物の恨みは恐ろしい」と。
特に、その日の食べ物もない貧困にあえぐ人が増えた今は…。


鳥が台風の豪雨の中、電線に止まったまま雨に打たれていた。
20230816_094609.jpg

ある議員が国会で、
北海道の土地が外資に売られていることを憂慮して質問したら、
当時の大臣が、
「ニセコのようなああした土地は、外国資本が入ってこないと、
今の繁栄はなかったと思う」って、ノー天気な答弁をした。
(平野秀樹氏)

だから言われたのかもな。

「1995年、中国の李鵬首相がオーストラリアの首相に、
日本という国は40年後にはなくなってしまうかもわからぬ」と。
(宮本雅史氏)

すでに命の水を外資に委ねた自治体もある。
こんな軽率で恐ろしいことはない。


でもこうしたことは、みんなあんたら政治家が招いたことではないですか。

真剣に日本国のこと、国民のことを考えて政治家になったのなら、
フランスへ税金で観光旅行へ行く発想も、
クルーズ船に乗ってはしゃぎまくるなんてこともあり得ない。

むしろ「こうした悪い慣行は止めませんか」と進言すべきでしょうに。


女の政治家なら、もっと身近な暮らし向きのことをなぜ考えないの?
子供のことや同じ女たちに夢や希望を持たせる仕組みを、
なぜ真剣に模索しないの?


若者たちが将来の夢を描ける社会、誇りを持てる人生を
なぜ、作ろうとしないのか。

夜空に白い雲。
雲

東大卒? 有名歌手? それがどうした?
その肩書が人々のために何かの役に立ちましたか?

フランスに行くヒマがあったなら、日本の隅に目を向けろと言いたい。
すべての問題とすべての答えは、この日本の中にあるんだから。

ただし、田舎の盆踊りに参加するのは違いますよ。
あれは票欲しさに媚びを売りに行くだけだから。


「男たちだってやってるじゃない。もっとえげつないことを。
ただ巧妙に振る舞うからわからないだけ」というのも真実だろう。

だからこそ、私はそういう男たちと同じふるまいをしてほしくはなかった。
同じふるまいをするのなら、わざわざ女性を政治家に選ぶ必要はない。

かつての女性政治家たちは、
古い因習や差別に苦しめられている女性たちの解放のために闘った。


同性だからこそ言う。

そういう真面目さ。勤勉さ。融通の利かなさ。潔癖さ。
そこにこそ、女性政治家のありがたさが出てくるのだから。

でなければ血税であんたらを「飼っておく」意味がない。
ただの人寄せパンダに「飯を食わせる」義務は、サラサラない。


とうがらし

とまあ、文章ではスラスラと勇ましいことを言えるのに、
これがご近所や職場のいやがらせだと、からきしダメで…。
うまく言えなくて、グッと我慢しちゃうんですよ。

そんな自分の不甲斐なさと悔しさで自律神経がおかしくなって、
不眠症や胃腸障害を起こす。バカですねぇ。


※参考文献
領土喪失・規制なき外国人の土地買収」
宮本雅史 平野秀樹 KADOKAWA 2018
サイレント国土買収・再エネ礼賛の罠」平野秀樹 KADOKAWA 2023
日本が売られる」堤 未果 幻冬舎 2018

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ダイヤモンドに…

世間話③
08 /18 2023
♪ 熱海~の 海岸 散歩ォーする~
  貫一お宮の 二人づれェ~

「いきなり妙な歌なんか歌い出して、どうしたんですか!
さてはとうとうボケがきたか」

なぁーんて、いわれそうですね。


まあ、そのケも無きにしも非ずだけど、そんな私でも悩みがあるんですよ。

力石ブログなのにこの頃はちっとも、力石にご無沙汰で。
それでウツウツと。

三重之助先生からは相変わらず、「静岡の力石、探してください」と、
情け容赦ないご依頼。とまあ、これは冗談ですが、

なにしろ当県は力石貧困県で、
学芸員さんからも「あんな石っころ」と差別されまくりの石なので、

もう、無理だぁー。

まあ焦っても仕方ないですからね、のんびり行きましょうというわけで、

熱海です。

熱海と言えば、貫一お宮のスッタモンダの恋物語でしょう。

落ち葉で描いたハートマークですが、風が吹けばたちまち破れます。
貫一お宮の恋もあえなくハートブレイク。
CIMG4491.jpg
熱海市・来宮神社

貫一お宮といったって、なにしろ明治時代の小説ですから、古臭いです。
古臭いですが、熱海の海岸には銅像が建っています。

貫一お宮は尾崎紅葉という作家が書いた小説
「金色夜叉」の登場人物で、
紅葉が途中まで書いて急逝したため、弟子があとを書き上げたとか。


この二人は婚約者同士だったが、大富豪に見初められたお宮が、
「ダイヤモンドに目がくらみ、乗ってはならぬ玉の輿」に乗ってしまい、
哀れ貫一は裏切られてしまいます。

そこへいくと、力石の力持ちに憧れた乙女たちは純朴でいいねぇ。

金も力もない貫一は、屈辱に打ちひしがれて、

♪ 宮さん かならず来年の 今月今夜のこの月は 
  僕の涙で曇らせて 見せるよ 男の意気地から


お月さんってなぜか、つらく悲しい時に注目されます。
20220814_220813.jpg

そしてあの名場面、

♪ 恋に破れた貫一は すがるお宮を突き放し
  無念の涙 はらはらと 残る渚に月寂し


下の写真は5年前、
貫一お宮の銅像の前でポーズをとってくれたお二人さんです。

「ブログに載せていいですかぁー」と聞いたら、
「はーい。どうぞ」とにっこり。

「今は女性の方からこうなのよ」と。

どうしているかなア、お二人さん。きっと幸せになっていますね!
CIMG4500.jpg

この物語は実話だそうですが、ただし裏切られたのは紅葉の友人で、
その友人の代わりに紅葉が「玉の輿」に乗った女性を蹴ったんだそうです。

今ならDVで警察沙汰ですね。

さて、その後はどうなったかというと、


振られた貫一はやけを起こして悪徳高利貸しに身を落として、
金の世界に生きるのですが、
どうやら二人とも「お金」にご執心の方だったようで。

でも最後は美しいお話で終わることになっています。

さて、
お宮さんは大富豪の「ダイヤモンド」に目がくらみましたが、
この日の私は、温泉玉子に目も胃袋もくらみましたですよ。

だって食い気しか残っていない世代ですモン!


まぁだかな 温泉玉子 波の音  雨宮清子

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「みんなの南アルプス」

世間話③
08 /15 2023
前回、静岡県知事の川勝平太氏は、
静岡文化芸術大学の学長だったことをお話ししました。

その大学でデザインを学んでいた女性が今、
大井川中流域の川根本町で
「わな猟」をされているんです。

太平洋に面した海の街で育った若い女性が、
どのような思いで高齢化が進む山間集落へ移住し、
地元の猟師さんを師匠に鹿やイノシシ猟をするようになったのか、
彼女の素敵なお話を動画でご覧ください。

彼女は言います。


「私は本当に普通の人です。
山にとても詳しいとか、動物のエキスパートでもなく…」


罠を仕掛け、仕留めて、解体して肉、皮、角まであますところなく利用する。
それは「命を粗末にすることがないように…」と。



静岡県自然保護課「みんなの南アルプス」

今、この川根本町で活動している新米猟師さんは3人。
しかも全員若い女性。

私が若いころにはその発想すらなかったので、もう尊敬しまくりです。
いいですね。


古い考えをごく自然に破れる、隔世の感を覚えます。

このあたりは山登りに山村巡り、神楽や民俗芸能、
新聞の取材で林業家や船宿、陶芸家、大井川の水返せ運動の方、
母さんたちの村起こしの店、近年では力石の調査にと、ずいぶん通いました。

でも猟師になるという発想はまったく思い浮かびませんでした。


30数年前、大井川流域の「大札山自然観察会」に参加した時の写真です。
当時はまだ中川根町といっていたころの役場の職員さんと。
img20230814_10245409_20230814180558f4f.jpg

もう一つ、見てください。
南アルプスの熊の話です。

熊の取材にも行きましたよ。
民宿でクマ鍋もいただきました。

猟師さんでもある民宿の経営者が、息子さんを指して、
「こいつ、可哀そうだと言って鳥も撃てねぇんだ」と苦笑いしていましたが、
今はどうしているかなぁ。

女性の猟師さん登場で、頑張っているかも。
(笑)


静岡県自然保護課「みんなの南アルプス」

上流域はリニアで大揺れの地域です。
中流域は水量の減少で、多大の影響を受けます。

氷河期からの手つかずの自然が色濃く残り、
そうした自然を人々は敬いつつ利用し、長い間共栄共存してきました。


そこにリニアのための長い穴を開け、
手つかずの天然林を壊して残土を置き、水源をいじって水量を減少させた。

リニアは強力な磁力を使った運転手のいない新幹線です。
事故や天災等が起きて甚大な被害が出れば、それを被るのは地元です。

老婆心ながら、一県民としてこんなことを願っています。

リニア関係者や国やみなさまが、こうした動画をご覧になることで、
南アルプスとそこに住む人や動植物を理解され、
常に自然への敬意や畏怖を持って対応してくださることを。

南アルプスは一企業のものではなく、みんなのものですから。


そして私自身の本音は、

「もうこれ以上、地球を壊すのは止めようよ」

お手すきの折にでも、
下記の静岡県自然保護課作成の動画をご覧いただけたら幸いです。

「みんなの南アルプス」


ーーー大阪のみなさーん、
        万博やカジノは今、どうなってますか!


「リニア中央新幹線をめぐって」山本義隆 みすず書房 2021によると、

「2016年、安倍首相が大阪までの開通の工程を8年前倒しして
法改正までして3兆円をJR東海に融資。(準・国策事業に格上げ)。
これは大阪維新の会の強い要望だった。


〖大阪万博・カジノ誘致・リニア新幹線〗という3点セットで、
大阪の経済を活性化させるというのがその目論見だった」


そうです。

そっかー。それで静岡空港付近に新幹線新駅を作らせなかったのか。
静岡を素通りさせて、名古屋、大阪へ。

静岡の経済発展は見捨てられた? 

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チラッと秋が…

世間話③
08 /12 2023
8月3日、草むらからチチチと虫の声。

えっ! 暑くてヘロヘロだってのにもう秋が来たの?

翌日、いつもの農協市場へ行ったら、
同じ空をツバメと赤とんぼが飛んでいた。

そういえばこの前、大きなオニヤンマがスーイとやってきて、
私の目の前でホバリング。
ホバリングとスーイを繰り返して、そのまま上階までついてきた。


子供の頃、オニヤンマはご先祖さまだって教わったから、
そうか、旧盆も近いし、あれはお父さんだったかも。

農協市場へ入ったら、生落花生が出ていた。
落花生

これが出てくればもう秋だ。

今、世界中が暑いけれど、
「これからは人類が経験したことがない時代が来る」と海外の学者は言い、
日本の学者も「今後は四季がなくなり、夏と冬だけの二季になる」と言った。

恐ろしいなぁと思うものの想像もつかない。


市場にはこんなのもあった。
「乾のり(ぶちのり)」

原材料名は「国産黒のり」と浜名湖産の「青のり(ヒトエグサ)」

アハハ、なるほど、それで「ぶちのり」か。
で、これ、10枚入りでたったの100円。

採算が合わないだろうにと心配しつつ買ってみた。
生の青のりは味噌汁に入れてよく食べているから、そんな感じかな、と。

のり

香りはあさくさのりには負けるけど、
サッとあぶって、砂糖醤油をつけたお餅に巻いたら、なかなかイケました。

(ひょっとして、安売りの海苔巻きの海苔ってこれかもな、
なんて思っちゃったりして。でも全然OKです。)

私が今、はまっているのは「うのはな」、おからです。
農協市場限定の「安心な食材」にこだわる地元企業のもの。

数も少なくすぐ売れてしまう人気商品なので、二日通ってようやくゲット。

本日はこれに、
でんぷんゼロ・すけそうだら100%のちくわときゅうりを加え、
マヨネーズで和えていただきました。

ドライカレーを作ったらカレー粉を入れ過ぎて辛すぎるので、
残りのおからで中和する予定。


北海道十勝秋田大豆キタムスメと駿河湾深層水で作られています。
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私の夏の飲み物は緑茶です。

麦茶がどうにも胃袋に合わなくて、それで水煎茶を愛飲。
ガラスピッチャーに水と緑茶を入れて冷蔵庫に。

私が飲んでいる水道水は安倍川という一級河川の伏流水です。

南アルプス前衛の山「大谷嶺」(日本三大崩れの一つ)が、この川の源です。

この川沿いには工場がなく、また伏流水なので本当においしいんです。
カルキ臭はまったくナシ。地下水の豊富な土地柄で、これは凄く有難い。

お茶ミルです。なかなか粉末にならないので最近は出番がありません。
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今、リニアでいろいろもめていますが、私は「こんなのいらない派」。
山岳地帯の地下深く走るこの乗り物は、静岡県民には利用できないのに、
負の影響は大きいのです。

ここには、
日本列島の脊梁山脈の一つ、南アルプスの3000m峰が連なっています。

問題は南アルプストンネル工事に伴う大井川の水資源と、
トンネルから出た残土の谷への投棄など、南アの自然環境への影響です。

JR東海では、
「ここにしかない貴重な生物が絶滅しそうなら、生息地をほかへ設ける」
と提案しているが、ご都合主義の暴論としかいいようがない。

大井川の水の問題は古くから地元住民を泣かせてきました。


大井川は電力会社の取水でダム銀座になり、水が流れなくなった。
それで沿岸は常時乾燥しているので、大雨が降ると大水が一気に流れ、
乾いた岸をえぐり洪水を起こしてきた。

また、
お茶に必要な川霧が発生しなくなり、茶農家は打撃を受け続けているんです。
昔、取材した折に見た農家さんたちの苦悩が、今も忘れられません。


当時、私が書いた新聞記事です。
あれから30年。今度はリニアという形で再び水の問題が…。
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当時のことは、「よみがえれ 大井川・その変貌と住民」
静岡地理研究会 1991に詳しい。本の著者たちは巻末にこう書いている。

「下流の都市の近代的スプリンクラー農業や発電のために、
最後の一滴の水をしぼりとるようにダムが建設されている。
上流域に何が残されたのか。
夏には石が焼けて熱風が、冬には砂塵が舞う砂漠が残された」


第二東名の工事では、地下をちょっと掘っただけで温泉の水脈が変わり、
井戸水が枯れたから、リニアでも水源豊かな南アルプスの地下をいじると、
水脈にも下流域にも影響があるのでは、と思うし、


その山塊の地下をくり貫くって自然への冒涜とも思えるし、
そのしっぺ返しがいつか必ず起きるように思えてなりません。

笊ケ岳から見た南アルプス南部の山々。
赤石岳、聖岳、荒川岳など南アの主峰が威容を誇っています。
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工事中に大量の地下水が噴き出て難航というニュースをよく見たから、
そんな地中深くの水源の中を走る列車って、本当に安全なのか。

近くを糸魚川構造線が走り、東南海の巨大地震のこともある。
富士山の噴火も囁かれている。

JR東海では「災害が起きた時、リニアが活躍する」と言いますが、
それは人間の驕り。それにそこだけ無事という保証はどこにもない。
どんな科学技術をもってしても、自然の力には敵わないと思う。

走行中に大地震で地殻変動が起きて地下深くに閉じ込められたら、
列車ごとタイムカプセルに、なんてことにならないとも限らない。

このモグラ列車に乗る人って本当にいるんだろうか。私はご免被る

経済の低迷、貧困層の増加、貧富の格差拡大、少子高齢化、人口減少。
こんな日本の未来に、
東京、名古屋間をそんなに早く行き来したい人が、どれほどいるのか。
莫大なお金と膨大な電力を食うリニアって、誰のためのものなんだろう。


赤石小屋から見た聖岳
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そしてもう一つ疑問に思うのは、
リニアを強力に推進してきたJR東海名誉会長だった葛西氏が、
中国国家主席が来日した折、「実験線に乗りたい」と言ったら、
「技術を盗まれるからダメだ」と断ったそうですが、

ならば、なぜ、

すでに中国国営企業がメガソーラーや風力発電という形で
日本列島の至る所を浸食しているのに、なぜこれを許しているのですか?、

他国に日本の森や休耕地や海岸を破壊され、
今後はその大事な国土を”盗まれ”かねない事態なのに。

「太陽光パネルの寿命はたかだか20~30年。
加えて彼らに補助金を出している「FIT法」の期限が2030年代に切れるから、
そのとき大量の産業廃棄物となる。

その放置された膨大なパネルから有害物質が森から下流域へ流れ、
田畑も海も汚染されて、日本列島は人の住めない廃虚になる恐れがある」

(平野秀樹氏)

リニアの目的の一つが最先端技術の海外売り込みだとしても、
肝心の日本という国がなくなってしまったら、どうするつもりなのか。

平野氏によれば、
日本列島に張り付けられたパネルの74.7%は、中国の生産だという。
また表向きは資本金1万円などの合同会社を作り、
ただ一人の社長兼社員として帰化中国人などを据えて、
本当の電力会社の姿を見えなくしているなど、実に巧妙だという。


元・新聞記者がSNSで、
「リニアに反対している静岡県知事は、リニアを中国初にしようとしている人。
知事にしてはいけない人」と、「共産主義者」のレッテル貼りをしていたが、
この人には”本物”の跋扈は見えていないんですね。

このように最近、静岡県知事叩きが目に見えて増えてきたが、
JR東海は「静岡空港付近に新幹線駅を設置する」と言う約束を反故にした。
以後も静岡の意見をことごとくスルー。そして、ここへ来て異様な知事叩き。

「狂ってる。支離滅裂」などと、地方議員が知事を貶める発言をしたり、
知事とJR東海のやりとりを正確に伝える地元新聞をも「左翼新聞」と吹聴する
輩やメディアが、外堀を埋めるがごとくワラワラと湧き出てきた。

実におかしなことになりました。


と、まあ、ちょっといきり立ちましたが、気分を変えて、
これが、私が飲んでいる農薬や化学肥料を一切使っていない煎茶です。
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ビタミンCが豊富で、夏には最適です。
飲み終わったあとの茶殻は刻んで梅肉やジャコ、塩昆布と混ぜたり、
鰹節をかけたり、マヨネーズで和えたりして食べてしまいます。

お茶の消費が低迷しているうえ、
なかなか理解が得られない無農薬茶ですからご苦労も多いかと思いますが、
4軒の農家さん、がんばっています。

茶畑は山奥にありますから、昨年の大雨で崩れて大変だったそうです。

動画をご覧ください。静岡のお茶の風景も楽しんでいただけたら…。


夜、部屋を暗くして寝転んでいたら、パッと光が差し込んできた。

光の元をたどったら、中空にお月様がポツンと。


月

秋がチラッと見えました。

※参考文献/「サイレント国土買収・再エネ礼賛の罠」
         平野秀樹 KADOKAWA 2023


ーーー大井川の自然とリニア

静岡県知事だけではなく静岡県民にまで、
得体のしれない執拗なバッシングが起き続けています。

静岡県民は穏やかです。でも、郷土の自然を守る気持ちは熱いです。
バッシングする人達は知事と国土交通大臣の権限をすり替えるなど、
わざと嘘を流して、混乱や誤解を招いています。悲しいことです。


川勝平太・静岡県知事は大阪生まれで京都育ち。
静岡文化芸術大学学長を経て静岡県知事になった方です。

下の動画は大井川上流の自然とリニアについて、
静岡大学名誉教授の増澤武弘先生が話されています。


優しい気持ちになれます。ぜひ、ご覧ください。


提供/静岡県自然保護課「みんなの南アルプス」

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読書の夏・老いるということ

書籍
08 /09 2023
久坂部羊という人を知ったのは、ほんの10日ほど前です。

何か面白い本はないかと図書館の資料検索をしていたとき、

「寿命が尽きる2年前」という本が目に留まった。
早速借りて読んだら、これがおもしろい。


著者は、「2年後に死ぬとわかったら、
いつまでも元気で長生きという理想の選択はなくなります」と言い、
さらに「そうなったら延命など考えず、医療に近づくな」と、
世間一般の医者とはまるっきり違うことを言うのです。

今までにない発想に引きずり込まれて、この人の本を次々借りた。


「人はどう死ぬのか」「オカシナ記念病院」「老父よ、帰れ」
「黒医」「生かさず殺さず」「MR」


老人施設から父親を引き取った息子の悲喜劇に、思わずウフフ。
老父よ
朝日新聞出版 2019

久坂部氏は大阪大学医学部出身の医師で、外科、麻酔科で研修。
その後、在外公館の医務官となってサウジアラビアやオーストリア、
パプアニューギニアに赴任し、
帰国後、在宅医療に携わるようになったという経歴の作家です。


著書には一貫して以下のような事柄が書かれていた。
ただし、著者の対象は高齢者です。

「寿命が尽きかけたら病院へ運ぶな。延命治療で苦しめるだけだ」

「認知症に効く薬はない」「自覚症状がなければ検査も治療も不要」
「健康診断は受けるな。受けて検査結果が異常値と言われても、
若者も老人も正常値の基準が同じなんてあり得ない。だから気にするな」

「骨粗しょう症だといって、
80歳の老婆にカルシウム剤を飲ませても骨まで届きません」


「高齢者のコレステロールが高いからといって、
30年後の動脈硬化を予防する必要があるでしょうか」

「ガンが見つかっても老衰のほうが早い場合がある。それならことさら、
病気を見つけ出すより何もしないほうが心安らかです」

ああ、納得! 


合間にこんな本も。クマの母子の写真と解説が素晴らしい。
最近はクマの恐ろしい記事ばかりが突出していますが、共存すべき命です。
その生態を知り、事故を未然に防ぐ指針ともなる本。
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「ツキノワグマのすべて」
小池伸介・著 澤井俊彦・写真 文一総合出版 2020
「日本をダメにした新B層の研究」適菜収 ベストセラーズ 2022

今まで私は「ボケ防止に効果がある食事」だの「サプリ」だの、
「寝たきり防止の体操」なんてのに囚われていたけれど、
こうもはっきり言われてしまうと、ふんぎりがつくというものだ。


医者だった著者の父親も「自然のままに」を信条にした人で、
重症の糖尿病なのにコーヒーには砂糖を3杯、たばこは吸いたい放題。

85歳で前立腺がんと診断されたら「しめた。これで長生きせんですむ」と。
86歳で腰椎の圧迫骨折。だが本人の希望で治療せず自然に任せ、
在宅のまま87歳で大往生したという。


7編を収めた短編集「黒医」、これがまたすごい。

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KADOKAWA 令和元年

出生前診断でお腹の赤ちゃんは無脳児だと言われ、
中絶か産むか悩む母親に、お腹の子が声を出す。
「生まれたくない」「殺してくれ」と。
結局、死産。だが出てきた子は無脳児ではなく正常児だったという。

これは、科学は万能と思い込んでいる人間たちを胎児が揶揄した話だが、
不妊治療の名医の秘密を描いた「のぞき穴」というぞっとする話もある。

大人用おむつなどが売っている「シニアコンビニ老村(ローソン)」
なんてのも出てくる。

医師としての確固とした知識に裏打ちされた冷徹さとブラックユーモア、
巧みな書き手だなぁと思いました。


そしてもう一人、小堀鴎一郎という医師を知りました。

母校の東京大学医学部付属病院で外科医として勤務し、
定年後は訪問診療医として在宅患者の看取りに関わっている方です。

偶然にも小堀氏も久坂部氏も元・外科医で、高齢者医療の従事者。

小堀氏はドキュメンタリー「人生をしまう時間(とき)の出演者で、
あの明治の文豪、森鴎外のお孫さんだそうです。

私、このドキュメンタリー見ました。

糸井重里氏との対談集「いつか来る死」を読んで驚きました。
久坂部氏と同じ思いをお持ちだったからです。


カトリック信者の小堀先生、聖母病院の医師のもとへ20年間ほど通った。
入院患者にはカトリック関係者が多くいて、その医師が、
「ブラザーでもファーザーでも死ぬのはこわいんだ」と言っていたとか。
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マガジンハウス 2020

久坂部氏と小堀氏の共通した思いとは、こういうものでした。

「食べないから死ぬのではなく、死ぬべき時が来たから食べなくなるのです」

「在宅で看取りを決めていた101歳の女性の息子から、入院を要請された。
死に向かう母親をまじかに見ていられなくなったんでしょう。
しかし、一旦入院したら医者は無駄とわかっていても気管切開や点滴をする。
これをすると患者は苦しみつつ死ぬ。


彼女も人工呼吸器をつけた。命が長引くにつれ家族は来なくなった。
寝たきりのまま暗い集中治療室で10か月生き続けたが、
だれにも看取られず亡くなった。病院における孤独死です。
あのまま在宅で看取れば数日で安らかな最期を迎えられたのに」
(小堀氏)

「一旦、胃ろうなど作ったらなかなか死ねない。
あとから取ってと頼まれても、医者は殺人罪に問われるから
取り外すことはできない」
(久坂部氏)

小堀氏は「死ぬべき時が来たから食べなくなる」としつつも、
「一人一人それぞれのケースがある。胃ろうをして元気が回復して、
また口から食事ができるようになる場合もある」


「認知症のテストは万能ではない。
認知症テストでダメだった人が実生活ではちゃんとふるまっている。
その逆もある。認知症は病気ではなく老化の一つという学説もある」

「医療は科学的になればなるほど[医療]から遠ざかる。
患者とは関係のない研究者の[趣味]になる」
(久坂部氏)

この作品、う~ん、イマイチ。平板で新鮮味がない。
主人公のグダグダ話をダラダラ聞かされている感じ。
img20230803_11030869.jpg
朝日新聞出版 2020

高齢者医療の専門医のお二人に見えているものは、
テレビに出てくる医者や老人向けの本が示すものとは全く違いました。

今までの私の認識はすべてひっくり返りました。
老いるということに抗うことも、身構えることもしなくていいんだと思ったら、
憑き物が落ちたみたいに心が軽くなりました。


そしてお二方は言う。
「日本人は死を穢れたものとして常に遠ざけてきたが、
死は決してタブーではない。タブーにしてはいけない」

「自分にとって大事なことは何なのか、意識しながら一日一日を生きる。
人は生きてきたようにしか死ねませんからね」と小堀氏。


で、小堀氏の著作ももっと読んでみたくなって、貸し出しの申し込みをした。

この炎天下、本読みたさに図書館まで徒歩で往復40分の道のりを、
三日ごと汗だくで通い、帰宅後はシャワーでさっぱりしてから、
エアコンガンガンの部屋で読書三昧の日々。

今、久坂部氏のデビュー作「廃用身(はいようしん)を読み終えたところ。

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幻冬舎 2003

実話のようなフィクションという実に巧妙な書き方で、
この主人公は著者自身? いやそんなはずはないと何度も自問自答。

これは「廃用」となった手足を切断して老人たちに活気を取り戻すという
画期的な新治療を始めた老人施設の医師が、医師会や世間、
マスコミからの攻撃に追い詰められて自死、妻もあとを追うという、
サスペンスもどきの、しかし非常に奥深い物語でした。

生活のクオリティを高めるために無用となった四肢を切り落としたことは、
この医者個人の嗜虐性のなせる業か、
それとも彼は老人医療の突出者だったのか。


歪曲報道と、それに便乗して主人公を叩く幼なじみや昔の同僚やご近所さん。
世間は、真面目に取り組んだ記事より歪んだ報道を歓迎し信じてしまう、
そうした現代の病んだ社会を見事にあぶり出していた。

ちなみに「廃用身」とは、脳梗塞などで回復の見込みのない手足のことで、
れっきとした医学用語だそうです。


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果物はいいねぇ

世間話③
08 /06 2023
暑ーいですねッ!

みなさまに暑中お見舞いを言う前に、私の方がバテバテです。

先日沖縄の息子から恒例のマンゴーが届きました。

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いつもは順調に届くのに、今年はなんか変な具合になっちゃって…。

待てど暮らせど予定の日時にも翌日にも届かない。
配達状況を見ると沖縄と本土の途中で止まったまま。

ま、まさか、まだ空の上?

台風は来てないし、飛行機は飛んでるし…。
おいしそうなので誰かが食べちゃったか!

なぁんて思っていた三日目、ついに来ました!


配達のお兄さん、少しビクビクして言い訳を始めたので、
「おー、来た来た。ありがとう」と言いつつ、「はい、冷たいものをどうぞ」と
三日前から冷やしてあった缶コーヒーを渡したら、恐縮すること。

小声で「あのこれ、いいんですか」と言うので、
「はい。いつもありがとう」と返したら、照れつつ満面の笑み。

本当に明るく爽やかなお兄さんなんですよ。


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さっそくご近所さんへおすそわけ。これも恒例。

10日後、ご近所さんからお返しの桃が届きました。

私よりずっと若い方ですが、いろいろお世話になっています。
野菜やアジの干物やなにやかや、私はいただきっぱなしです。


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さて、夏と言えばスイカ。
欠かせない私の「水菓子」です。

本日はもうこれだけになりました。


なぜか地元産のスイカにはお目にかかれません。
新潟や石川産が出回っています。下の写真は山形産です。


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私はスイカの白い部分をサラダにして食べています。
ちょっと赤い部分を残すとほんのり甘みがあっておいしいです。

塩を振ってしんなりさせて、マヨネーズで和えれば出来上がり。

この夏、孫が大井川鉄道のトーマスくんに乗りに来て、
ついでに家へ立ち寄った際出したらよく食べてくれました。

息子が、
「野菜嫌いで苦労しているけど、これはよく食べる。
何なのこれ? 作り方を教えて」と。

写真は黄色っぽく写っちゃいましたが、本当は白いです。
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いつまで台所に立てるかわからないけれど、料理は楽しい。
食べることはもっと楽しい。

で、食後、ふとネットのニュースを見たら、
故ダイアナ妃が着たセーターがすごい高値でオークションに、
という話が出ていた。

赤地にたくさんの羊が編みこまれていて、
真ん中に一匹、色の違う羊という構図です。

あれ? 私も似たようなものを持ってるぞ!

それがこれ。
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30年ほど前に大阪で買いました。
私の干支だし、捨てがたくてまだ持っています。

ダイアナ妃のセーターとは羊の数も違うし、値段も桁違いだろうけど、
なんだか晴れやかな気分で、ご機嫌な一日となりました。


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トランスジェンダー

世間話③
08 /03 2023
動画「トランスジェンダー 高校生のカミングアウト」を見た。

「LGBTQ」という言葉が世間に知られるようになって久しいけれど、
なかなか理解してもらえないのは、官僚の言葉からもわかる。

でもそういう私自身も、100%受け入れているかと問われれば、
そうではない。

違和感、ビシビシ。生理的に無理だァという思いも、正直ある。

それに、
いろんなタイプがあって、こんがらがるばかりでよくわからない。

「男性、女性はそれぞれの性ホルモンで支配されているのだから、
体だけではなく心もそうだろう」と思ったり、
「胸も生理も女性そのものなのに、心だけ男になるなんてそんなはずはない」
とも思ったり、

「体は女だけれど心は男」という人が、赤ちゃんを産んだりすると、
ますます混乱する。

おっぱいも張るだろうし「母性本能」も湧くだろうし、
いったい、どうなっちゃってんだろう、と。


おとこおんなこおんな

でも、
トランスジェンダーが話題に上るたびに思い出すことがある。

一つは母から聞いた「男女(おとこおんな)」のこんな話です。

「子供の頃、近所に女同士で夫婦のように住んでいた人がいた。
一人は断髪でいつも男の着物を着ていた。
その人は胸にさらしを固く巻いて、おっぱいを隠していた。
みんなは「おとこおんな」と呼んでいた。相手は全く普通の女性だった」

母が生まれたのは大正時代だったし、田舎のことだから、
この二人にとって、想像を絶するつらい生活だったはず。

母は事実を淡々と話しただけで、自分自身の感想は一切しなかった。
時折、こんな風に昔話をしたから、これもその類いだろうと思った。


二人
静岡県浜松市北区引佐町・奥山半蔵坊方広寺

二つ目は中学生の私が目の当たりにした出来事です。

その人は村のバス会社の「バスガール」さん。
当時は車掌さんのことをそう呼んでいて、若い女性の憧れの職業だった。

色白で小柄。華奢な体つきの美人さんで、
つややかな長い黒髪が印象的な人だった。


お出かけらしい姿を駅で見かけたときは、柔らかなスカートを風になびかせ、
ハイヒールを履き、手には素敵なハンドバックという装いで、
どこからみても結婚前の初々しい女性にしか見えなかった。

ところが間もなく、変な噂が飛び交うようになった。
「男になった」、つまり「おとこおんな」に変身したというのです。

村の人たちは「ふたなり」と言っていた。
一人で二つの性を持っている、つまり両性具有という意味だ。


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そのころ村で唯一の雑貨店を開いていた我が家の店先で、
ある晩、騒動が起きた。

そのバスガールがやってきて、
店の商品ケースに血の付いたドスを置いて逃げたのだ。

そのときのいでたちときたら、
胸と腹にさらしを巻き、腕や背中に入れ墨、頭は断髪。

小柄で色白だったから、まるで歌舞伎の子役みたいに見えたが、
本人は肩をいからせて、すっかり男になりきっていた。
それから、今までとは打って変った声で、こう言い残して逃げた。

「人を刺してきた。おばさん、これ、預かってくれ」

すぐに村の駐在さんが来て、大騒ぎになった。


「彼女は隣り町のヤクザの組に入っていて、
この夜、出入りがあって相手の腹を刺して逃げてきた」というのだから、
ぶったまげました。

この夜以来、この人は村からプッツリ姿を消した。


半蔵坊1
同上

世間で「LGBTQ」が話題になると、決まってこの二つの話が脳裏に浮かび、
こんなことを思うのです。

「大正時代からそれはあったんだ。
でもその人は、世間の冷たい仕打ちにもめげず「男」として生きた。

そういう強さを持ち続けたということは、
世間で常識と言っている物差しでは測れない、
自分でもどうすることもできない「別の性」があるということなんだ。


バスガールからヤクザになった人も、苦しみ抜いた結果なんだろう。
極端に走ってしまったけれど、そうするよりほかに
自分に正直に生きる方法が見つからなかったに違いない」と。

この人を受け入れてくれたのはそこだけというのも、
何かを示唆しているようで考えさせられます。

カミングアウトした高校生の動画を見て、改めて思った。

性志向って、こんなにたくさんあったんだ。
自分はいつの間にか、
「最大多数が世間の規格・常識」という考えに縛られていたのかもなぁと。

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そういえば、昔、こんなことがあった。

上司の一人にゲイさんがいて、男性社員の体を触ってくるので、
若い男たちは一緒にエレベーターに乗るのを避けていた。
女の私だけは無事だったが、この人には妻子があった。

世間体のため結婚したそうだが、別に若い男性の恋人もいた。
一度お宅へ伺ったときの寂しげな奥さんの顔と沈んだ暗い部屋の様子に、
私は残酷だなと思った。


先日、音楽館でトイレに入ったら、
顔をすっぽり覆うほど帽子を深く被った中年の男性
(と思った)がいて、
トイレを間違えたかと慌てて飛び出したが確かに女性トイレだった。

あとから続々と女性たちが入って来ても動じなかったが、
何か釈然としなかった。


女装していようがいまいが、痴漢やのぞきとの判別は難しい。
「自分の心は女性だから女性トイレに」と言われても、これは無理だ。


逆に、心は女性なのに体は男性だから男性トイレに、というのも、
当事者にとってはつらいかもと思いつつも、正直、私にはよくわからない。

トランスジェンダーの人は公共のトイレはどちらを利用しているんだろう。

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私にはわからない苦労やつらいことがいっぱいあるんだろうなと思いつつも、
でも私はこうも思っているんです。

理解できないよ、わからないよと正直に言ったっていいんじゃないのって。
無理してわかったふりをして理解者ぶるなんて、偽善者みたいだし。

もし100%わかってくれと言われたら、シチメンドクセェーとなって、
今度はこっちの苦痛になる。

大事なことは、
自分が理解できないことを頭から拒絶することのないよう、
自分の立ち位置だけが正常だと思い込まないよう、心していることだと。


単純に言えば、こんな感じ。

「お互い、ゆる~く生きようぜ!」

でも当たらず触らずってことになっちゃうかもなぁ。

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雨宮清子(ちから姫)

昔の若者たちが力くらべに使った「力石(ちからいし)」の歴史・民俗調査をしています。この消えゆく文化遺産のことをぜひ、知ってください。

ーーー主な著作と入選歴

「東海道ぶらぶら旅日記ー静岡二十二宿」「お母さんの歩いた山道」
「おかあさんは今、山登りに夢中」
「静岡の力石」
週刊金曜日ルポルタージュ大賞 
新日本文学賞 浦安文学賞