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力石を愛でてやってください

男の、元・大学教授の、力石研究の第一人者でもダメ。

どういうことなの? 

頭の中が真っ白になった。
それでも私は腹をくくり、「8月下旬に行く」と決めて先生に伝えた。

ところが今度は、こういう返事が返ってきた。

「9月から市議会が始まってそちらが忙しくなる。9月下旬なら」

知り合いの役人に聞いたら、笑いながらこう言った。
「文化財課の職員が市議会で忙しいなんて聞いたことがないよ」

いよいよ、なんだかわけがわからなくなって、
足元は、「どこまで続く泥濘(ぬかるみ)ぞ」状態になった。

CIMG5502.jpg

これほど理不尽な要求をこれでもかと突き付けてくるには、
何か魂胆があるとしか思えなかった。

多分9月末になれば、また別の拒否の理由を言ってくるはず。
すでに疑心暗鬼になっていた私は、そう思わずにはいられなかった。

そんなぬかるみにはまり込んで、泥水を飲まされるのはもうたくさんだ。

私の精神状態はもう限界だった。

ここはもう、力石調査の原点に戻るべきだと思った。

渋沢栄一が村の若者たちと石担ぎをしたという神畑地区へ直接うかがって、
いつものように調査すればいいだけのことではないか。

そう決めた私は、師匠の高島先生にこう伝えた。

「先生、もう止めましょう。これ以上、翻弄されるのは無駄ですから」

「そうか。そうだな。頃合いを見てでかければいいか。
で、先方にはどういうふうに言おうか」

「先生にお任せします」
「そうか。じゃあ、二人とも都合がつかないとでも言おうか」

というわけで、そういう無難なお断りをした。
それっきり、X氏とのやり取りは途絶えた。

しかし、

2年前、原点に戻って独自調査をすればいいと思ったものの、
千葉県野田市での力石式典に招待されて出かけたりしているうちに、
世の中はコロナ一色になり、調査の機会は失われてしまった。

この力石は2016年11月に埼玉の研究者・斎藤氏が新発見した力石です。

戸田市氷川神社・新発見
埼玉県戸田市上戸田3-20-11・氷川神社。60×57×13余㎝

この日、斎藤氏は卯之助石ほか15個もある氷川神社へ再調査へ。
おりしも七五三で、境内は着飾った幸せな親子でいっぱい。

そんな光景に背を向けて石と対面。いくつかの誤読を見つけてメモしていると、
不審に思った男性から声を掛けられた。

丁寧に力石の説明をしていると、町内会長と宮司さんがやってきた。
幸い、力石に熟知している宮司さんだったので話が弾んだ。

そんな中での新たな発見です。宮司さんもびっくりの出来事だったとか。

「上戸田村力石」

刻字もありました。

戸田市氷川神社

X氏にぜひ知って欲しいのです。

私たちはこんな石っころを、こんなふうに調査しているのです。

お金にもならない。業績としても認められない。すべて手弁当。

でも、面白いのです。石には歴史がぎっしり詰まっているのです。

昔の若者たちの汗や涙、喜び、悲しみが染み込んでいます。

私はそうした石の声を聞きたくて、この調査をしてきました。
無刻字の石であろうと、有名人ゆかりの石であろうと、分け隔てなく。

でも、ご理解いただけなかった。

そして今年3月、あの「誰にも知られずにそっとしておきたい」力石が、
なぜか、埼玉県の博物館に展示されているのを知り仰天。

あのとき力石の調査を拒否した理由と、
その力石を県外へ貸し出したのは誰かを知りたくて、
私は即座に、市の秘書課宛てに質問メールを出した。

X氏の回答はこうだった。

「どのような経緯で県外に展示されることになったのかは、全く知らない。
指定文化財ではないので、所有者との交渉で展示することになったのでしょう」

「なぜあのように調査を拒んだのか」については、

「9月24日以降に、というこちらの提案に、
高島先生から、二人とも都合がつかないとのご連絡をいただきました」

内心、こうおっしゃりたかったのか。

「こちらが拒んだのではなく、
お宅様たちが自分たちの都合でやめたではないか」と。

もしそう思われたのなら、打ち明けます。

先生と私は大人の対応をしたのです。

たとえ相手の言動に不審な点があっても、コトを荒立ててはいけない。
たとえ内心、「××野郎」と思ったとしても、

人を傷つけることのないよう、人倫の道に外れることのないよう、
おのれ自身を戒めて、そうして穏便に対処したのです。

     ーーーーー◇ーーーーー

上田市神畑の元・紺屋さんの庭にあった力石は、
現在、埼玉県立歴史と民俗の博物館に展示されています。

img20210406_12274633 (2)
NHKドラマ特別展「青天を衝け~渋沢栄一のまなざし~」展示資料より

ドラマの中にあった石担ぎシーンも、この力石からの発想ではないでしょうか。

力石はきれいに磨かれて、
展示資料217点の中の一つとして、ガラスケースにはいっているそうです。

もし、ご覧になる機会がありましたら、
この石を巡って、「力石バカ」の老姫のブログで、
場外乱闘もどきの何やら変なドラマがあったなぁと笑いつつ、

力石を愛でてやってください。

     
     ーーーーー◇ーーーーー

高島先生ブログ(4月7日)

「埼玉県さいたま市岩槻区横根・北辰神社」


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プロフィール

雨宮清子(ちから姫)

Author:雨宮清子(ちから姫)
昔の若者たちのスポーツ「石上げ」に使われた「力石(ちからいし)」の歴史・民俗を調査研究しています。力石のことを少しでも知っていただけたら嬉しいです。

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