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はきもの絵引

急にドカンと夏がきました。

暑くて活字が頭に入りません。なので絵で遊びました。

参考文献は「石山寺縁起」

石山寺は滋賀県大津市にある日本最古の霊場だそうです。
奈良時代、聖武天皇の勅願により良弁(ろうべん)僧正が開創。

なんとここには、あの紫式部が、
「源氏物語」を書くために籠っていた部屋があるそうです。
巻き紙に筆でサラサラと書いていたんでしょうか。

全部で7巻あるこの縁起絵巻、
鎌倉時代から江戸時代までのいろんな画家が補写したとか。

こんな少年も登場します。鞍(くら)は藁(ワラ)製。
img025_20190805093947cb7.jpg

疾走する馬に乗る少年の髪は「放ち髪」
背中で風に舞っているのは「綾藺笠(あやいがさ)=イグサで編んだ笠。
短袖の着物の柄はでしょうか。なかなかおしゃれです。

さて、本日は足元に注目してみました。

深沓(ふかぐつ)です。
img020_20190805110052e88.jpg

牛皮製。
皮製は女性は履かなかったと書いた本もありましたが、
この絵巻には皮の深沓姿の女性も登場します。

下の絵をご覧ください。

右の女性の赤い履物は(しとうず)、今でいう靴下です。
下靴(したぐつ)ともいい、この上にワラジを履いたようです。

真ん中の男二人は浅沓(あさぐつ)を履いています。木製です。

子供は裸足(はだし)。
この時代は大人も子供も裸足が多い。なんだか痛そう。

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鼻緒のところがモジャモジャした草鞋(わらじ)は「舌地沓(したじぐつ)」
モジャモジャは「六葉の舌」というのだそうです。
舌に似た藁製の輪が6枚ついていたということでしょうか。

別名「乱緒の沓」

これは警護などをする衛府の役人の履物です。

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建久のころ(1190-99)、
山城国に謀反の輩が立てこもったため、
源頼朝の命を受けた中原親能が石山寺に戦勝祈願をした。

下の絵はその合戦に加わった兵士の足ごしらえです。

左の兵士は草鞋(わらじ)ですが、
右の二人は足半(あしなか)を履いています。

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下の絵の履物は今のサンダルにそっくりです。
私の子供のころは「突っかけ」と呼んでいました。

この時代にすでにあったとは驚きです。

渋沢敬三氏は著書「絵引」に、
「サンダルを思わせるものが描かれているが鼻緒を省略したとは思えないし、
この時代にサンダルに似たモノがあったかどうかも証明できない」
として、「よくわからない」と書いています。

でも、ちゃんとありました。

img027_2019080511492030c.jpg

ルイス・フロイスの「日欧文化比較」を訳した岡田章雄氏によれば、
これはげげ(下下、芥子)というものだそうです。

つまり下々(しもじも)の者が履くもの。
でも縁起絵巻には、「げげ」を履いた高僧もいました。

ゲゲとくれば、ゲゲゲの鬼太郎ですが、
鬼太郎のゲゲゲのゲは、この「下下」と関係あるのでしょうか。
ただ、鬼太郎の履物は普通の鼻緒の下駄ですが…。

絵巻には足駄(あしだ)も出てきます。
歯の高い足駄はトイレ用に好まれたとか。

、なんだかわからなかったのがこれ。

石山寺の深覚大僧正は、
病気の親王の加持祈祷のため内裏へおもむきます。

この不思議な履物は、大僧正が乗った輦車(れんしゃ)を護衛する
官人たちが履いていたものです。

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敬三氏の「絵引」では、糸鞋(しかい、いとぐつ)としていますが、
うーん?

「いとぐつ」は下の写真のような、貴族や能の楽人・舞人が履く絹製履物です。
上の絵の履物とはあきらかに違いますよね。

くつ糸

「石山寺縁起」の解説には藁沓(わらぐつ)とあります。

で、他の文献をあたってみました。

下の絵でみると、一目瞭然、
やはり、(わら)製の深沓(ふかぐつ)が正しいみたいです。

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もし「渋沢敬三の絵引」の解説が間違っていたのなら、
「敬三先生の勘違いを見つけちゃった!」わけで…。

なんだかウフフの夏のひとときとなりました。


※参考文献・画像提供/「石山寺縁起」日本の絵巻16 小松茂美編 
               中央公論社 昭和63年
              ./「新版絵巻物による日本常民生活絵引」第三巻
               澁澤敬三・神奈川大学日本常民文化研究所編
               平凡社 1984
               /「新修国語総覧」江午務ほか編 京都書房
                1987
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プロフィール

雨宮清子(ちから姫)

Author:雨宮清子(ちから姫)
昔の若者たちのスポーツ「石上げ」に使われた「力石(ちからいし)」の歴史・民俗を調査研究しています。力石のことを少しでも知っていただけたら嬉しいです。

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