お幾(き)んさんとお千代さん
神田川徳蔵物語
荷役・運送業の「飯定(いいさだ)組」の親方、飯田定次郎。
力自慢の血気盛んな若者たちを束ねるには、
それなりの押しの強さと器量、技量がなければ務まりません。
そんな剛腕の男の元に嫁いだのが武士の娘だった「お幾(き)ん」さんです。
徳川さまの家臣だった「幾ん」の父親は、幕末の上野の戦争のあと、
妻と幼い幾ん姉妹の3人を、当時私塾を開いていた妻の兄に預けて、
「自分は殿さまと一緒に品川から船に乗って行く」
と言い残して黒門町の家を出たという。
これが慶喜公を守って静岡へ行ったということだったのか、
それとも、新政府樹立のため函館へ向けて出航した
榎本武揚率いる艦隊のことだったのかはわかりません。
どちらにせよ、父親の消息はそのままぷっつり途絶えたそうです。
函館戦争で討死したのか、はたまた静岡の清水湊に停泊中、
官軍の襲撃を受けた咸臨丸の犠牲者の中にいたのかもわかりません。
わずか三歳で父を失い、他の幕臣の娘たち同様、
苦労の多い人生を歩いて来たお幾んさんは、孫たちにいつも、
「赤毛(官軍)は悪いやつだ」と言っていたそうです。
そんなお幾んさん、定次郎との間に1男5女(二女は夭折)を授かります。
定次郎と娘たち
※下の写真について、先に大正末ごろの写真でしょうかと書きましたが、
縁者で情報提供者のEさんから、
「昭和八年一月十五日撮影とあります」とお知らせいただきました。
左の二人は、お正月なので日本髪に結ったのですね。

前列中央が飯田定次郎。向かって右が長女。
父親の定次郎さんは、この長女を一番頼りにしていたのかも。
左端の女性は不詳。
後列向かって左から長男の妻、四女、三女、
そして右端の人物が今回の主人公・徳蔵の妻、五女のお千代さんです。
4人の娘さんはみなさん、母・お幾んさんの優しさ、たおやかさ、
それに、徳川家と運命を共にした
武士の娘としての凛とした姿を受け継いでいらっしゃいますね。
子福者となった定次郎は、組同様、家庭をもがっちり支配して、
一家の主として君臨し、一族の結束を固めます。
「子供たちの結婚は父親の定次郎によってすべて決められた」
とひ孫のEさん。
しかしただ一人、自分の意志を貫いた「強い」娘がいました。
末っ子の五女、お千代さんです。
お千代さん、気性だけではなく、お顔まで父親にそっくり。
普段は荒くれ男たちに睨みを利かせている定次郎父さん、
愛娘たちに囲まれて照れくさかったのか、
威厳のあるお顔はそのままでも、膝の上の手が定まらず、
阿弥陀様になっちゃってます。
<つづく>
力自慢の血気盛んな若者たちを束ねるには、
それなりの押しの強さと器量、技量がなければ務まりません。
そんな剛腕の男の元に嫁いだのが武士の娘だった「お幾(き)ん」さんです。
徳川さまの家臣だった「幾ん」の父親は、幕末の上野の戦争のあと、
妻と幼い幾ん姉妹の3人を、当時私塾を開いていた妻の兄に預けて、
「自分は殿さまと一緒に品川から船に乗って行く」
と言い残して黒門町の家を出たという。
これが慶喜公を守って静岡へ行ったということだったのか、
それとも、新政府樹立のため函館へ向けて出航した
榎本武揚率いる艦隊のことだったのかはわかりません。
どちらにせよ、父親の消息はそのままぷっつり途絶えたそうです。
函館戦争で討死したのか、はたまた静岡の清水湊に停泊中、
官軍の襲撃を受けた咸臨丸の犠牲者の中にいたのかもわかりません。
わずか三歳で父を失い、他の幕臣の娘たち同様、
苦労の多い人生を歩いて来たお幾んさんは、孫たちにいつも、
「赤毛(官軍)は悪いやつだ」と言っていたそうです。
そんなお幾んさん、定次郎との間に1男5女(二女は夭折)を授かります。
定次郎と娘たち
※下の写真について、先に大正末ごろの写真でしょうかと書きましたが、
縁者で情報提供者のEさんから、
「昭和八年一月十五日撮影とあります」とお知らせいただきました。
左の二人は、お正月なので日本髪に結ったのですね。

前列中央が飯田定次郎。向かって右が長女。
父親の定次郎さんは、この長女を一番頼りにしていたのかも。
左端の女性は不詳。
後列向かって左から長男の妻、四女、三女、
そして右端の人物が今回の主人公・徳蔵の妻、五女のお千代さんです。
4人の娘さんはみなさん、母・お幾んさんの優しさ、たおやかさ、
それに、徳川家と運命を共にした
武士の娘としての凛とした姿を受け継いでいらっしゃいますね。
子福者となった定次郎は、組同様、家庭をもがっちり支配して、
一家の主として君臨し、一族の結束を固めます。
「子供たちの結婚は父親の定次郎によってすべて決められた」
とひ孫のEさん。
しかしただ一人、自分の意志を貫いた「強い」娘がいました。
末っ子の五女、お千代さんです。
お千代さん、気性だけではなく、お顔まで父親にそっくり。
普段は荒くれ男たちに睨みを利かせている定次郎父さん、
愛娘たちに囲まれて照れくさかったのか、
威厳のあるお顔はそのままでも、膝の上の手が定まらず、
阿弥陀様になっちゃってます。
<つづく>
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