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お堂の中の物語

由比の力石
03 /13 2016
由比東山寺・東山神社に保存された力石を写真に収めたあと、
望月久代さんが薬師堂へと招じ入れてくれました。


普段は固く閉ざされている扉が開く瞬間って、なんともいえないですねえ。

ワクワク

この薬師堂は前回ご紹介した由比本陣・岩辺郷右衛門政重が、
寛文元年(1661)に建立したものです。


「由比本陣公園」として蘇った本陣跡です。
中に「東海道広重美術館」があります。
img938.jpg
静岡市清水区由比

私が東海道をうろついていたころの本陣跡です。このときはまだ工事中でした。

岩辺郷右衛門の先祖は由比氏といい、鎌倉時代は源頼朝に、
室町時代には今川氏に仕えた武士で、由比郷の領主。
また、日蓮宗の高僧を数名輩出した名門一族です。

この由比氏、江戸時代になると刀を捨てて町人になりますが、
のちに本家の由比氏傍系の岩辺氏に分かれます。

傍系の初代岩辺郷右衛門は徳川家康にことのほか好かれ、
家康は鷹狩りの折りには、本陣にたびたび立ち寄ったそうです。

薬師堂建立者の郷右衛門政重はその五代目にあたります。

薬師堂の棟札です。
img940.jpg
「由比町の歴史」より

上棟文にはだいたいこんなことが書かれています。

「東山寺に薬師の殿堂があるが、
今その尊像は雨に洗われ風に晒され磨滅状態。
そこで諸檀越と志を合わせて古に復せるためにここに堂を創建した」


前回お伝えした経文「純円独妙経」(法華経)の版木は、
この薬師堂建立の25年前に彫られたものです。
その25年の間に隆覚寺もまた、衰退しつつあったということでしょうか。

堂建立の同じ年に、版木から経文が摺られました。
それがこちら。
CIMG2765.jpg

実はこれ、どこにあったかというと、なんと薬師如来>の胎内。

版木を見つけたとき、同時にこちらも発見されたそうです。
天井裏から版木が、薬師さまのお腹の中からは経文が…。
発見者の驚いた顔が目に見えるようです。

経文を胎内に納めていた薬師さまです。
CIMG2757.jpg

下の写真は発見された当時の経文です。
この摺られた経文の中に、どういういきさつで版木がつくられたか
という由緒書「開板縁起」があったそうです。

つまり前回ご紹介した
「発願者は開山・見真上人」「彫りは京都の花田専惣」「書は耽源和尚
完成は「寛永13年(1636)」などを書いたものです。

img942.jpg
「由比町の歴史」より

一つ残念なことは、
この版木や経文、由比町の文化財として大切に扱われていたのに、
平成の大合併で由比は静岡市に編入されたため、
静岡市の文化財指定からはずされてしまったことです。

こうした郷土の宝を長年守り続けてきた小さな町の方々が
合併によって不利益をこうむることはあってはならないこと。
小さな集落では守りきれません。

静岡市には再考を望みます。

版木・経文発見の折り、実はもうひとつの発見がありました。
面です。
img886 (2)
「東山寺の歴史」より

ただしこの「面」、現在は所在不明だそうです。
なんとも気品のある面です。
こういった面をつけてこのお堂で舞楽を催したんでしょうね。
本当に惜しいことをしました。

この面、どこから見つかったかというと、
こちらの弘法大師座像の胎内なんです。
CIMG2761.jpg

「由比町の歴史」の著者・手島日真氏によると、
由比の神社仏閣のほとんどは、
由比太郎左衛門と岩辺郷右衛門の息がかかり、名が連ねてあるそうです。

しかし、由比太郎左衛門家は明治中期には疲弊して、
家屋敷を売って行方不明になってしまったとか。


昔のお金持ちは、そのお金で神社や寺を作ったり橋をかけるなど、
慈善事業にも熱心で、私腹を肥やすということをあまりしなかった…。

それにひきかえ、
今はお金に固執する徳のない政治家やお役人やコバンザメがワサワサいて、
ああ、やんなっちゃうなあと、つくづく思います。

そうそう、「由比町の歴史」にこんな一文がありました。

「明治の廃仏毀釈で廃寺となった寺は、廃藩に伴う士族に払い下げられた。
隆覚寺は8円50銭4厘で東山寺出身の士族に払い下げられたが、
その士族は他の払い下げと共にすぐそれを売り、母を連れて上京。
しかし職探しの途中、病死してしまった」

時代の変革のむごい一面を見る思いがしました。

※参考文献・画像提供/「由比町の歴史(上・下)」手島日真 
            由比文教社 昭和47年
           /「東山寺の歴史」望月久代 私家本 2015 


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雨宮清子(ちから姫)

昔の若者たちが力くらべに使った「力石(ちからいし)」の歴史・民俗調査をしています。この消えゆく文化遺産のことをぜひ、知ってください。

ーーー主な著作と入選歴

「東海道ぶらぶら旅日記ー静岡二十二宿」「お母さんの歩いた山道」
「おかあさんは今、山登りに夢中」
「静岡の力石」
週刊金曜日ルポルタージュ大賞 
新日本文学賞 浦安文学賞