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テシャマンクに見送られて

三重県総合博物館
01 /21 2016
山の中の雨は一直線に降る。
大きな雨粒が幾筋も交差しつつ、フロントガラスにドカドカ突き当る。
頭の上ではドシャドシャバタバタ乱れ打ちだ。
周囲の木々はざわざわと落ち着かない。


「どこかで雨乞いでもしているのかしらん」

坂の途中で停まったままの車の中で、私はそんな空想をしていました。

20分ほどたったころでしょうか。
突然フロントガラスに二つの大きな目玉が張り付きました。

竜神様に供えた牛の首が飛んできた!
と思ったら、中野さんと師匠を乗せた四駆のライトでした。

車外に出た中野さんはニコニコ。だが師匠は顔面蒼白。
その師匠の帰還第一声は、
「死ぬかと思った!」

なんでも中ノ沢沿いの道は断崖絶壁で、しかも今にも崩れそう。
おまけにどしゃ降りの雨で視界が効かない。そこを中野さんはガンガン飛ばす。
「ほかに道は?」と師匠が聞くと、「あるけどものすごく遠回りになるから」と。

「ここが終焉の場所かと覚悟した」と師匠。

私のトラバサミの恐怖を笑った師匠、今度は自身が怯えている。
クックックッ。お互いさまですねえ。

樹木におおわれてちょっとわかりにくいですが、
師匠が命がけ?で撮影してきたシャビキ石です。
川根本町・社引石3
榛原郡川根本町東藤川坂京

写真の右手に見える道が「遠回りの道」らしい。
地図で見ると沢沿いの道はこの道に突き当たり、三叉路になっている。
塞の神様をお祀りするには最適の場所です。
でも咳の神様、シャビキさまに今はお参りする人もなく…。

まだ青ざめたままの師匠と笑いをこらえた私は、
柔和な中野さんに見送られて、
本日の最終目的地、大井川の最上流部静岡市井川へ出発。
坂京の山々を抜けるころにはストンと雨も上がり、川底から白い霧が…。

霧深し井川の峰に力石(いし)尋ぬ  雨宮清子

井川に着く。
長い夏の日はすでに闇と交替し始めていました。
大急ぎで怪力テシャマンクの墓を探して撮影。
私たちは闇に追われるように井川をあとにしました。

「おーいおーい」
背後で誰かが呼んでいます。見るとテシャマンクが、
「また来いよーっ」と大きな手を振っておりました。

CIMG0216.jpg
静岡市井川

県内9ヵ所を巡った石探しの長い一日が無事終わりました。
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雨宮清子(ちから姫)

昔の若者たちが力くらべに使った「力石(ちからいし)」の歴史・民俗調査をしています。この消えゆく文化遺産のことをぜひ、知ってください。

ーーー主な著作と入選歴

「東海道ぶらぶら旅日記ー静岡二十二宿」「お母さんの歩いた山道」
「おかあさんは今、山登りに夢中」
「静岡の力石」
週刊金曜日ルポルタージュ大賞 
新日本文学賞 浦安文学賞