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大江さん、石に挑む

一番目の写真、すごくいいですね。私、気に入ってます。

石を「両手差し」している人が大江誉志(たかし)さん。
周りであっけにとられて見ているのは、岐阜県各務原(かかみがはら)市の
フルコンタクト空手伊藤道場・少年部のみなさんです。

安定したきれいな姿で頭上高く石をさし上げていますが、
これは日ごろから鍛錬している大江さんだからできることです。

バランスを崩したり手を滑らせたりすれば、たちまち石の直撃を食らいます。
今も昔もその危険性は変わりません。
そのため、一人での挑戦を禁じた村もあったそうです。

力石をバーベルに持ち替えて優勝した神田川徳蔵の写真を見ると、
両手差しの時は、足を前後に開いています。
足の開き方で安定性がどう違ってくるのか、大江さん、今度教えてくださいね。

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各務原市・八幡神社

大江さんに関する情報や写真は、
大江さんの「ケトルベルトレーニングブログ」と、
Facebook「東海力石の会」からお借りしています。

石を担ぐ動画Facebookやユーチューブで見られます。

かつての力石体験者がいなくなった今、
それを再現してくださった貴重な動画です。ぜひご覧ください。

さて、ここで大江さんご一家が住む岐阜県の力石のお話を少々。
岐阜県には現在、225個の力石が確認されています。
うち文化財指定の力石は5個。その一つがこれです。

img839.jpg
郡上市美並町・林広院 重さ114㎏。47×44×35㎝。  
撮影/高島愼助四日市大学教授

あとの4個は、こちら。
img840.jpg
下呂市萩原町・明白神社  撮影/高島愼助教授

①98㎏、45×37×37㎝ ②94㎏、48×35×26㎝、
③86㎏、37×35×31㎝ ④53㎏、35×32×22㎝

近くの神社に放置されていたものを明白神社に運び文化遺産として保存。
説明板にはこう書かれています。

「学問の神様、明白天満宮の知育・徳育と共に、
力石は体育の象徴として崇められていることは意義深い」

こちらは岐阜県最大の力石です。
有名な力持ち力士・新川七五郎の名前が刻まれています。
こんな立派な力石が文化財に指定されていないのは、ホントに残念!

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揖斐郡揖斐川町・谷汲山華厳寺 107×43×34㎝

「奉納 大坂 力持石 新川七五郎持 同徳枩 若濱寅吉 
若濱嘉四良 江戸屋房吉 宝山屋嘉吉 三河屋竹四良 若濱音吉
浪花市平 世話人 長瀬村 治右衛門 佐助 与三右門 作兵衛 直七
九良平 
明治四辛未年開帳 勇力持之 三□岡崎 石大工 栄吉作

新川七五郎は、神奈川県池辺村(現・横浜市都筑区)出身で、
幕末から明治初年に活躍した力持ちです。

また、酒問屋・豊島屋の怪力として知られ、
四代目・歌川広重「絵本風物往来」に描かれた
あの鬼熊門人でもありました。

新川七五郎自身もまた、
慶応3年の「大阪力持番付」、明治5年の「東京力持番付」に、
その名を連ねた幕末の力持ち界の大物です。

東京、神奈川、兵庫、広島、香川、そしてここ岐阜に力石を残しています。

この華厳寺にはもう一つ、力石があります。

これです。
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92×45×28㎝

「さし石」

大江さんによると、
華厳寺でこの石に挑戦していたとき、外国からの観光客が興味を持ち、
これに挑戦したそうです。
写真はてっきり大江さんかと思ってしまいましたが、
海外からの観光客だそうです。

でも、この方も大江さんも残念ながら失敗

   今日もまた担がれぬまま陽は落ちて  大江誉志

石担ぎの難易度は、
重さや大きさだけではないと、かつての体験者たちから聞いています。
「小さくても鉄分を多く含んだ石は非常に重い」
油石は滑って扱いにくい」「形がいびつな石は重心が動いて担ぎにくい」
丸い石は胸から転げてしまう」

大江さんのケトルベルトレーニングに「重心」という言葉が出てきたとき、
なんだか力石の動作と似ているなあと思いました。

この日、華厳寺で力石に挑戦した観光客にとって、
一番印象に残った日本の思い出になったことでしょう。

力石を介した道端の文化交流、このさりげない国際親善に乾杯!



<つづく>


※参考文献・写真提供/大江誉志「東海力石の会」
               「ケトルベルトレーニングブログ」
               /「力石ちからいし」2011、「石に挑んだ男達」2009
               いずれも高島愼助 岩田書院
             /「新発見・力石」高島愼助・斎藤保夫 岩田書院 2010 
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プロフィール

雨宮清子(ちから姫)

Author:雨宮清子(ちから姫)
昔の若者たちのスポーツ「石上げ」に使われた「力石(ちからいし)」の歴史・民俗を調査研究しています。力石のことを少しでも知っていただけたら嬉しいです。

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