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「片手差し」の力石

力石の保存
06 /24 2014
北斎の「絵手本」の中の「力くらべ図」
その中に力者が片手で石を挙げている絵が出てきます。
これ、「片手ざし」という技なんです。

こんな大きな石をどうやって頭上高く、しかも片手だけで挙げられるのか。
img180 (2)

ここで、石担ぎの順序からご説明します。

まずは腰を落として両手で石を持ち、わずかに持ち上げる。
蟻が殺される程度の隙間だから「あり殺し」という。
または蟻が通れるほどの隙間だから「あり通し」ともいう。

次が「ひざ取り」。腹に力を込めて膝まで挙げる。
そして今度は一呼吸置いてから一気に胸まで挙げるのです。
これを「胸取り」という。
力者は大きなおならを出すこともあるが、見物人は絶対笑ったりしません。
力持ちの集中力が削がれて、大ケガをしてしまいますから。

政治家は時に人を愚弄する野次を飛ばしますが、昔の人たちは
ちゃんと礼儀をわきまえていたのです。

さて、胸まで挙げた石をいよいよ肩へ担ぎます。
これで「力石を担いだ」ということになるのです。
さらに、その石を肩から両手で頭上高く挙げる技を「石ざし」といい、
それを今度は少しずつ片手に移動させ、
ついに片手一本で挙げた技を「片手ざし」というのです。

これを実際やった力持ちとその石をご紹介します。
CIMG0579 (2)

静岡市清水区追分の春日神社の力石です。
立派な刻字があります。

嘉永四年生 鷺坂力蔵 片手差しの力石  納 鷺坂粂吉


この石を片手で持ち上げた鷺坂力蔵さんのご子孫、今も同所にお住まいです。
2年前、学習センターで力石のお話をさせていただいたとき、
講演会場へこの石をお借りしてきたんです。
ですが最初は重くて、誰も動かすことができませんでした。

これを片手一本で頭上に挙げる、信じられないほどの力持ちです。

明日につづく
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雨宮清子(ちから姫)

昔の若者たちが力くらべに使った「力石(ちからいし)」の歴史・民俗調査をしています。この消えゆく文化遺産のことをぜひ、知ってください。

ーーー主な著作と入選歴

「東海道ぶらぶら旅日記ー静岡二十二宿」「お母さんの歩いた山道」
「おかあさんは今、山登りに夢中」
「静岡の力石」
週刊金曜日ルポルタージュ大賞 
新日本文学賞 浦安文学賞