グローバルヒストリー
書籍
ものすごいおもしろい本を読んだ。
読んだというより「出会った」といったほうがピッタリくる。
図書館の棚に置かれていた新書版。
「駒形丸事件」
初めて聞く事件だ。
副題は「インド太平洋世界とイギリス帝国」となっている。
文章のうまさにぐんぐん引きずられて、その日のうちに読んでしまった。

第一次世界大戦が勃発する直前の1914年、事件はカナダで起きた。
インド人ビジネスマンが連れてきたインド人移民376人が、
カナダ政府に上陸拒否された事件で、
その移民を乗せてきたのが日本の船会社所属の「駒形丸」だった。
イギリス帝国、イギリスの植民地インド、帝国からの独立をもくろむカナダ。
日英同盟の手前、動けない日本。
どこまでもついてくる人種差別。
♪すべて白人みな兄弟 黄色いやつらはずる賢い
ほかのところへ行きやがれ
♪白人の地のために闘おう 国王万歳が合言葉
ホワイトカナダ永遠に!
差別の内容はインド人、中国人、日本人それぞれ違うが、
先住民はその中からも排除されていた。
駒形丸の移民たちは上陸拒否で2か月間も船に閉じ込められ、
そのまま本国へ送還。しかし帰った自分の国で虐殺に遭ってしまいます。

香港、上海、門司、神戸、横浜、カナダ・バンクーバー、ビクトリア、
シンガポール、インド・コルカタ(カルカッタ)を漂流すること5カ月。
この5か月間の出来事を丹念に追うことで、当時の政治情勢、各国の思惑、
暗躍するビジネスマンの動向、移民の実体などを浮かび上がらせた。
それに暗殺、虐殺も加わって…。
昔、ちょっと滞在したカナダの風景を思い浮かべながら、
推理小説も及ばないスリル満点な歴史の真実を見せていただきました。
著者は英国史がご専門の大阪大学教授の秋田茂氏と、
カナダ史、イギリス帝国史がご専門の鹿児島大学教授の細川道久氏。

秋田教授(右)、細川教授(左)。本よりお借りしました。
第一次資料にあたり、現地に足を運ぶなどして、
共著の出版まで10年の歳月を費やしたとか。
本のカバーに、こうありました。
「日本ではほとんど知られていない駒形丸事件だが、
この小さな事件を通してミクロな地域史からグローバルな世界史までを
総合的に展望できる。
移民史、政治史、経済史を融合させることで、インド太平洋からの
新しい世界史像を提示するグローバルヒストリーの画期的な成果」
歴史の本を読むと著者たちのこんな嘆きにたびたび出くわします。
「学校では地理、日本史、世界史と別個のものとして、
それもほんのちょっと教えるだけ」
その嘆きをこの本は吹き飛ばしてくれた。
著者の一人、秋田教授はあとがきにこう記してる。
「本書はどのような形で世界史と日本史の研究成果の接合・融合が
可能になるか、具体的な事例をわかりやすい形で提示することを試みた」
この事件から約1世紀たった2016年、カナダのトルドー首相は、
議会で「駒形丸事件」の謝罪表明を行った。
そして、事件の現場だったバンクーバーに追悼記念碑を建てた。
私はかつてカナダの教師から聞かされたこんな言葉を思い出した。
「カナダはそれぞれの母国のカルチャーをお互い尊重しつつ、
一つの国をつくっていこうとする国です」
姉亡きあとは遠い国になってしまったけれど、思い出は今も心に。

本は手軽な新書版ですが、中身は分厚く濃い。
なによりもわかりやすく読みやすい。
久しぶりに本に酔いました。
※「駒形丸事件ーインド太平洋世界とイギリス帝国ー」
秋田 茂 細川道久 筑摩書房 2021年1月10日
ーーーーー◇ーーーーー
高島先生ブログ(4月21日)
「千葉県成田市土屋・成田山霊光会館」

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読んだというより「出会った」といったほうがピッタリくる。
図書館の棚に置かれていた新書版。
「駒形丸事件」
初めて聞く事件だ。
副題は「インド太平洋世界とイギリス帝国」となっている。
文章のうまさにぐんぐん引きずられて、その日のうちに読んでしまった。

第一次世界大戦が勃発する直前の1914年、事件はカナダで起きた。
インド人ビジネスマンが連れてきたインド人移民376人が、
カナダ政府に上陸拒否された事件で、
その移民を乗せてきたのが日本の船会社所属の「駒形丸」だった。
イギリス帝国、イギリスの植民地インド、帝国からの独立をもくろむカナダ。
日英同盟の手前、動けない日本。
どこまでもついてくる人種差別。
♪すべて白人みな兄弟 黄色いやつらはずる賢い
ほかのところへ行きやがれ
♪白人の地のために闘おう 国王万歳が合言葉
ホワイトカナダ永遠に!
差別の内容はインド人、中国人、日本人それぞれ違うが、
先住民はその中からも排除されていた。
駒形丸の移民たちは上陸拒否で2か月間も船に閉じ込められ、
そのまま本国へ送還。しかし帰った自分の国で虐殺に遭ってしまいます。

香港、上海、門司、神戸、横浜、カナダ・バンクーバー、ビクトリア、
シンガポール、インド・コルカタ(カルカッタ)を漂流すること5カ月。
この5か月間の出来事を丹念に追うことで、当時の政治情勢、各国の思惑、
暗躍するビジネスマンの動向、移民の実体などを浮かび上がらせた。
それに暗殺、虐殺も加わって…。
昔、ちょっと滞在したカナダの風景を思い浮かべながら、
推理小説も及ばないスリル満点な歴史の真実を見せていただきました。
著者は英国史がご専門の大阪大学教授の秋田茂氏と、
カナダ史、イギリス帝国史がご専門の鹿児島大学教授の細川道久氏。

秋田教授(右)、細川教授(左)。本よりお借りしました。
第一次資料にあたり、現地に足を運ぶなどして、
共著の出版まで10年の歳月を費やしたとか。
本のカバーに、こうありました。
「日本ではほとんど知られていない駒形丸事件だが、
この小さな事件を通してミクロな地域史からグローバルな世界史までを
総合的に展望できる。
移民史、政治史、経済史を融合させることで、インド太平洋からの
新しい世界史像を提示するグローバルヒストリーの画期的な成果」
歴史の本を読むと著者たちのこんな嘆きにたびたび出くわします。
「学校では地理、日本史、世界史と別個のものとして、
それもほんのちょっと教えるだけ」
その嘆きをこの本は吹き飛ばしてくれた。
著者の一人、秋田教授はあとがきにこう記してる。
「本書はどのような形で世界史と日本史の研究成果の接合・融合が
可能になるか、具体的な事例をわかりやすい形で提示することを試みた」
この事件から約1世紀たった2016年、カナダのトルドー首相は、
議会で「駒形丸事件」の謝罪表明を行った。
そして、事件の現場だったバンクーバーに追悼記念碑を建てた。
私はかつてカナダの教師から聞かされたこんな言葉を思い出した。
「カナダはそれぞれの母国のカルチャーをお互い尊重しつつ、
一つの国をつくっていこうとする国です」
姉亡きあとは遠い国になってしまったけれど、思い出は今も心に。

本は手軽な新書版ですが、中身は分厚く濃い。
なによりもわかりやすく読みやすい。
久しぶりに本に酔いました。
※「駒形丸事件ーインド太平洋世界とイギリス帝国ー」
秋田 茂 細川道久 筑摩書房 2021年1月10日
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「千葉県成田市土屋・成田山霊光会館」

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