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性加害「捕食者」

世間ばなし➁
07 /19 2023
イギリスの公共放送、BBCドキュメンタリー
「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」を見た。

ジャニーズという会社の前社長・ジャニー氏の性加害を扱ったものだが、
取材を進めるたびに、記者の顔が青ざめていくのがわかった。

世間では、前社長による少年たちへの性加害行為は、
20年ほど前からというが、
私が出版社に入った60年前から、それはあった。


当時、出版社の社長が取引先の銀行から頼まれて、
金持ちの令嬢を半年ほど社員として預かったことがあって、
その彼女から、こんな話を聞いた。

「学生の頃、友達がジャニーさんから逃げてきたのよ」


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この出版社には芸能関係の週刊誌があって、
タレントのヒヨッコが出入りしていたが、当時の周囲の認識はこうだった。

「まともな家庭の子はこんな世界に入らないよ。女も男も商品だからね。
売れるためには体も売らなきゃスターになれないから。
親も承知でやってるんだから。どっちもどっちなんだよ」

「人気がそこそこ出てくると、今度は大人をアゴで使うようになる。
12、3のガキが椅子にふんぞり返って、
マネージャーに足を突き出して靴下をはかせたりするんだよ」


ただし、これを聞いたのは60年前のこと。

ですがそれがいつの時代であれ、もし本当なら、
この子たちは果たしてマトモな大人になれたのか。
歪んだまま天狗になったり、挫折して人生を棒に振ったりしなかったのか。

昨今は政界へ進出する芸能人も多いからと、いらぬ心配までしたくなる。

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言えることはどんな状況であれ、性加害を正当化できないということ。
だってれっきとした犯罪ですから。
しかもここでは、相手は子供で加害者は生殺与奪を握る権力者。

元・少年たちが異口同音に「行為の後、お金を渡された」と言った。

あの華やかな舞台裏では、こんな汚れたことが行われていたとは。

そのころ、自分で作詞作曲をするシンガソングライターが出てきて、
その一人が「これなら枕営業しなくて済むから」と言ったので、
なるほどなあと思った。

ジャニー氏からの性被害を受けた元・少年たちが、被害を訴えながらも
「今のぼくがあるのはジャニーさんのおかげです。今でも大好きな人です」
というのを聞いて、

BBCの記者は「狂っているとしか思えない」と絶句。

心理学ではこの状態を「グルーミング」、つまり飼い慣らしというんだそうだ。

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BBCの記者に対して、ジャニーズ事務所の対応もひどかった。
木で鼻をくくるというのはこういうことなんだなと思いつつ見た。

責任者が玄関口で、
馬鹿丁寧に無意味な言葉を機械的に繰り返すのを見て、
同じ日本人として恥ずかしかったし、健全さが全く感じられなかった。

記者はさらに、
テレビ、新聞、週刊誌、警察などあらゆる関係先に取材を申し込むものの、
「どこもカーテンを閉ざした」という。

なぜ口を閉ざすのかについては、
サイト「ジャニーズ百科事典」の「ジャニー喜多川」「メリー喜多川」に、
書かれている。

私はこの喜多川姉・弟はてっきり、日米のハーフかと思っていましたが、
両親ともに生粋の日本人だったんですね。

この隠ぺい体質と、
金と権力さえあればなんでも正当化してしまう日本の有り様に対して、
記者は怒りを込めてこう言った。

「子供を守らず誰も責任を取らず見て見ぬふり。恥ずべきことではないか」

「ジャニー氏の加害行為は決して秘密ではなく、それを取り巻く沈黙は、
虐待そのものとほとんど同じくらい恐ろしいといえるかもしれません」


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これと同じ状況が江戸時代にもあった。

「余はここにて黙して過ぐる能はざる一事を見たり」

こう言って絶句したのは、ドイツ生まれの学者ケンペルです。

ケンペルが見たのは、東海道筋の静岡県興津・清見寺門前で
10歳から12歳の化粧した男の子が、彼らの主人(膏薬屋)の命令で、
表向きは膏薬を売り、裏で旅人に買われる子供たちだった。


僧侶も武将も公然と男色にふける。
歌舞伎の若衆が男娼として体を売る。
長い間日本の男たちは、それを「文化」だと言ってきた。

同じ性志向の大人で納得づくなら構わないが、相手は何も知らない子供。

その幼い男の子の体を大人の男に合わせるために器具を使って改造し、
客を取るのを嫌がるとリンチされ、
17,8歳になるとわずかなお金でお払い箱にした。


「東海道中膝栗毛」の喜多八も陰間出身だと作者はいう。
「子供のころそれをやらされた者は、がに股だからすぐわかる」とも。

少年たちを食い物にした大人たちは、これを「日本文化だ」と言い、
西鶴も「男色は古きころよりの由緒あることなり」と大威張りで本に書いた。

以前、カナダで会った女性教師が、
自国のカトリック神父たちの少年への性加害を怒りを込めて摘発していたが、
日本の「放送文化人」たちは、ジャニーズ氏のこの行為を、
本人が死してのちも擁護する。


ケンペルが驚愕し、宣教師のザビエルが「世界に類を見ない」
と嫌悪してから、すでに350年余。
今度はイギリス人から「人間性が欠如している。なぜなんだ」
と、問題を突き付けられた。


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私が某令嬢から「友人がジャニー氏から逃げてきた話」を聞いてから
すでに60年立ち、先ごろ、有名作曲家の次男で俳優の某氏が、
70年前の自分の被害を告白した。「8歳のときから自宅で2年半続いた」と。

このおぞましい児童虐待はその間ずっと続いていたというのに、
この会社の現在の社長は「知らなかった」と言った。

この方の父親・藤島泰輔氏は上皇さんのご学友を公言していた。


WIKによると、
「藤島氏は、
事務所の実質的な運営者と言われ、のちに社長になった
ジャニー氏の姉のメリー喜多川と結婚した人で、
草創期のジャニーズ事務所を経済的にバックアップし、
ジャニー社長の人脈拡大を手助けした」とある。

ならば、当然、ジャニー氏の少年たちへの性加害を知っていたはず、
と思うのが自然です。


なのに黙っていた、諫めることもしなかったってことになる。

彼は新聞記者出身の作家・評論家だったのに。

日本社会はいつまで、この恥ずべき犯罪を黙認しているつもりだろうか。
いつまで「疑惑」というあいまいな言葉でにごしているつもりだろうか。

BBCの記者の驚きと嘆きと告発からメディアは逃げ、
「捕食者」とまで言われているのに、関係者は無言を貫いている。

国連の「ビジネスと人権」作業部会から、「異常極まりない状況」と糾弾され、
とうとう今月末から調査に乗り込まれる事態となった。

被害が発生してからすでに70年。
この国には自浄作用が全くなかったことが露呈した恥ずべき事態となった。

この件ばかりではない。被害者が男女や年齢を問わず、
日本人全般の性加害への感覚はいびつすぎる。

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夏の虫・美濃柴犬・狩猟犬

世間ばなし➁
07 /16 2023
ハトとの攻防戦も、ひとまず休戦。
でもいますからね、すっとぼけた顔してあちこちに。油断はできません。

代わりの来訪者は夏の虫。

真っ先にきたのは「ドクガ」。来てほしくない蛾です。


【注意】これ、毒針毛という危ない毛を持っています。
直接、触らなくても風で舞った毛がいつの間にか服に入ると、
大変な炎症を起こします。

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羽アリはもう大群で押し寄せます。

以前は網戸のどこをどう入ってくるのか不思議なくらいきましたが、
今は部屋まで入り込むことはなくなった。

でも、朝になると玄関先や通路にススキの穂がてんこ盛りという感じで、
積み重なっております。

まあ、ここは田舎の不夜城。
彼らにしたら巨大な誘蛾灯ですから仕方がないですね。

そんな羽アリを狙って蜘蛛が大活躍ですが、
みなさん、蜘蛛を嫌って蜘蛛殺しスプレーを噴射。


まあ、早朝ゴミ出しに行くと
通路に張り巡らした蜘蛛の糸にひっかかりますから、
「この野郎! シュッ」という気持ちもわかります。

こちらは家の中にいる「アシダカグモ」の子ども。まだ2cmほど。


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ゴキブリを食べてくれる益虫なので、私は平和に共存しておりますが、
以前いた公共施設の職員が、手あたり次第殺虫剤を噴射していたので、
「それ、悪さしませんよ」と言ったんだけど、聞かばこそ。

ずんぐりむっくりのクマンバチを「スズメバチだ!」と大騒ぎして、
たった一匹迷い込んできただけなのに、
一日に殺虫剤を一本使い切るほど撒くのでたまりかねて、

「それ、刺しませんよ」と言ったら、以後、挨拶も返さなくなった。


こちらはカミキリ。
一瞬、「注意報」が出ている外来種の「クビアカツヤカミキリ」かと。

ネットで図鑑を見たら、違うようだけど自信がない。
二つほど似たような虫がいた。

「ホタルカミキリ」と「クビアカモモブトホソカミキリ」

どっちだろう?

この「クビアカ、モモブト、ホソカミキリ」の命名、
見た目そのまんまなんですよね。

つい自分に置き換えてしまいました。
「クビシワ、ハラボテ、サキボソリ、ババムシ」


ーーーと書きましたが、間違っていたようです。(。-_-。)

ブログ「TAMIの気まぐれ通信」のTAMI22 Mさんから、
ご連絡をいただきました。


正しくは「カミキリモドキの仲間で、アオカミキリモドキ」。
「肌について潰れたりすると水泡ができるので要注意」とのことです。


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カナブンです。

写真では黒いですが、見た目は緑色だったから、
「アオカナブン」かと…。



ーーーと書きましたが、
こちらは「アオドウガネ」というコガネムシとのご指摘を受けました。

TAMI22Mさん、ありがとうございました。
かなり危ない昆虫が身近にいるものですね。気をつけたいと思います。

虫がたくさん飛んでくるので、飼育箱を持っているお子さんが多いのですが、
一人のお子さんの家の前を通ったら、飼育箱の中を捨てられていました。

この子は小学一年生ぐらいですが、よく草むらで虫を探している子で、
毒虫にやられて母親に叱られたのかもしれません。


アオカナブン

だんだんお馴染みの大物がやってきました。

「ノコギリクワガタ」と思いますが、どうでしょうか。

いつも虫かごを覗き込んでいる子供がいるのであげようと思っていたら、
翌朝、ひっくり返っていて、残念。

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出がけに「ヘビトンボ」を見ましたが、
あいにくスマホを置いてきてしまって、写せず。

あとからあれは絶滅危惧種と知って、
ああ、なんで引き返して写さなかったのかと悔やみました。

ただし、これ、噛みつきます。

今年はどんな虫の訪問があるかなあ。

これからが本番です。

今回は欲張って、話題をあと二つ。

ーーー美濃柴犬と高校生たちーー

ふと見つけた動画です。
もう感動しっぱなし。もう一度やり直せるなら、こういう高校に入りたい!

岐阜県立大垣養老高校の生徒さんたちの希少犬・美濃柴犬の取り組みを、
ぜひご覧ください。




「獣医になりたい」「動物に携わる仕事に就きたい」
「農業高校の先生になって美濃柴犬の普及に努めたい」と生徒さんたち。

同校の生徒会長が案内する動画
「大垣養老高校の美濃柴研究班」もぜひ、ネット検索してご覧ください。

同校は東京ドーム4個分の広大な敷地にあって、
美濃柴犬だけではなく、花の栽培、飛騨牛の繁殖・育成、木曽馬の保存、
地元企業とのコラボ商品など実践を踏まえた高校です。


ーーー狩猟犬と共にーー

私がいつも楽しみにしているブログがあります。
「生きもの二人三脚」。

伊豆半島で狩猟生活を送る「あっきょ」さんのブログです。
「この狩猟技術を次の人に引き継ぐまで」と、がんばっておられます。

数ある記事の中から以下をご紹介します。


「三重地犬の繁殖から一年」

希少犬の繁殖に頑張る高校生たち、
狩猟に真正面から向き合い、狩猟犬たちと暮らすあっきょ氏。

ニッポン、まだまだ捨てたもんじゃないですね!


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赤字でも電車が走っていたころ

世間ばなし➁
07 /01 2023
近ごろ、廃村や限界集落の動画をよく見るようになった。

人は道や川沿いに住む。
しかし、その場所が永遠でないことは、古代の遺跡からも見て取れる。

運搬手段が人力から動力に変わることで、運搬方法も川から陸へ移り、
その陸上の道も効率の良い新しい場所へ付け替えられる。

道の移動は当然、人の移動に直結し、取り残された村は過疎化が進む。

かつて静岡へ嫁いできた女性から聞いた言葉が、今も脳裏に浮かぶ。

「家は豪雪地帯なので母からよく言われていたんです。
あなただけは雪の降らないあたたかい町へ嫁ぎなさいって」


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広島と島根の県境の村で住人から聞いた話も忘れられない。

「町の人は電気でも家の修理でも業者に頼めるが、
こういう所はなんでも自分で出来なければ住めないんだ。

町の動物愛護団体が熊を殺すなって言う。熊の怖さを知りもしないで。
料理の匂いを嗅ぎつけた熊が換気扇に腕を突っ込むんだ。バリバリって。

高速道路ができたら、環境保護のやつらが自然破壊だと抗議に来た。
そのとき俺、言ってやったんだ。
だったら当然、あんたらは道なき道を歩いてここまできたんだろうね。
もし、この道路を使って車で来たのなら、
あんたらの言うことは矛盾してるんじゃないかって」


町へ続く道は山村の命綱だが、念願の便利な道ができたら、
今度はその道を通って住民が村を出て行くようになった、

ということもよく聞いた。

高度経済成長期にはそれが顕著になった。
それは道のせいだけではない。


燃料革命が起き炭焼きは廃業を余儀なくされ、
木材の輸入で山村の林業が立ちいかなくなって、
暮らしていけなくなったからだ。


人間ってやつは、おのれの家づくりや村づくりにすごい執念を燃やす。
でもそれは、
そこに豊かな暮らしを約束してくれる「食べていく手段」があってのこと。

それが立ちいかなくなれば、そこを離れていくしかない。

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小学生の頃、先生が言った。
「人のあまりいない村になぜ、電車が走っているのかわかりますか?」

人が少なければ乗る人も少ない。少なければ鉄道会社は赤字になる。
それなのに赤字でも電車を走らせるのはなぜかと、
先生は子供たちに問うた。


「それはね、
どこに住んでいても、みんな同じ恩恵を受ける権利があるからです」

もっと子供にわかりやすい言い方をしたが、
とにかくそういう趣旨のことを言った。


「都会ではたくさんの人が電車を利用します。だからたくさん収益があります。
そうしたところのお金を、あまり人が乗らない田舎にあてているのです。
みんな平等に暮らすためです」

子供の私はすごく感動して、日本って何んていい国なんだろうと思った。


その後、国鉄が民営化されて赤字路線は切り捨てられた。

独立採算制などという、目先の収益やすぐに形として見える功績を優先させ、
病院や大学、研究機関などの長期的展望を無価値とするような制度も出来た。
そうして、
なんでもお金で価値を決める社会が加速していった。

加速していくにつれて格差が広がり、弱肉強食が当たり前になり、
多様性が希薄になって短絡的思考の人間が増えていき、
急速に人々から優しさが消えていった。

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文明を追い求めること。
それは当たり前のことかもしれないけれど、
今でもなんだか割り切れない自分がいる。
遠い日のあの教師の言葉が、私の頭を占める。

今、日本の食料自給率は38 %だという。18%だという人もいる。
エネルギー自給率は11・8%。

海に囲まれ森や水資源に恵まれた国なのに、
国民は高い技術と志しと物づくりが得意な努力家揃いなのに、
今や木材も燃料も魚も肉も野菜、果物も外国から買っている。

家畜の飼料も畑の種も肥料も。

店頭には安い外国産が大量に並んでいる。

紛争や災害が起きて輸入がストップしたら、
日本はたちまち飢餓地獄になりそうだ。

日本人を全滅させるには爆弾なんて必要ない。
食料の輸入をストップさせれば、それでコトが済む。


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どうするんだろう。
政治家たちはちゃんとこの国のことを考えてくれているんだろうか。

私は、日本の国で出来た食べ物を、日本の海で穫れた魚を、
食べたい、食べ続けたい。


廃村や限界集落の動画を見ながら、想像するんです。
山や田んぼや牧場や果樹園や海で、生き生きと働く大勢の人の姿を…。

山の木が健全なら水もまた豊富に流れる。
川上が川下を豊かにするということを、昔、林業家から聞いた。
だが、
もはや「ここですべてが循環していた暮らし」は崩壊した。

今は、放置された山や畑や田んぼばかり。
自然と人が織りなしたあの生き生きとした時代は、もう来ないのだろうか。

グローバル社会って、結局、植民地主義と同じなんだと思った。

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今も繰り返される大人たちの戦争、難民船、飢餓の子どもたち。

そんな時、思い出すんです。
小学生だったころ、先生から聞いた「収益の平等分配」の話を…。
そういう優しかった時代を…。

時代錯誤と笑われようとも。


ーーー

まな板を買い替えました。
前のは天竜川上流部へ行ったとき購入したまな板で、
地元産木材を使い地元の方が作ったもの。10年使った。

今度のは大井川上流部の、やはり地元産木材で地元の方製作。
檜の芳香が広がる中で料理をしております。作った人の心を感じながら。

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ガステーブル

世間ばなし➁
06 /25 2023
ガステーブルを買い替えた。

使い始めて11年。
まだどこも悪くはないけれど、
この前、「老い支度」の講演会で聞いた話が妙に胸に刺さってて…。

講師の先生はこう言った。

「老年期には三段階ある。
まだまだ元気なピンピン期、少し危なくなってきたヨロヘタ期、
最後は力が尽きるバタリ期です」

講師は自作のこの「ピンピン、ヨロヘタ、バタリ」を、
興奮しながら繰り返した。

おかげで家に帰っても、この「ピンピン…」が脳裏から離れなくなった。

今の私は以前に比べたら体力は落ちた。
でもまだヘタバってはいないから、
「ピン、ヨロ」ってところかなぁなどと思いつつ、台所に立ったら、
ここへ入居したとき買ったガステーブルが目に入った。

ガス会社では10年目が買い替え時だという。


11年使ったガステーブル。
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講師の先生がとどめを刺すみたいに、
「料理ができなくなったら、人間おしまいです」
と言い放った絶望的な物言いが蘇る。

そうか。今までは考えてもみなかったけれど、
料理ができなくなる時が必ず来るんだな。

東海大地震じゃないけれど、
今の自分の年齢を考えたら、それは「いつ来てもおかしくはない」

というわけで、買い替えるなら、
まだ説明書も読めてホースの取り付けもできる「今しかない」と。

早速通販で購入。思いのほか早く手元に届きました。

今年5月の製造になっているけれど、段ボール箱はなんだか古い。
これ、大丈夫かなあと思いつつ、取り付けにかかろうとしたとき、

今までお世話になったガステーブルとの別れが、急に惜しくなった。

毎日三度三度、お世話になって、安全に楽しく使わせていただいたんだもの、
ガステーブルだってまだ私と同じ「ピン、ヨロ」ぐらいだもの、

それをもう価値がないと勝手に決めつけて捨てるなんて、
自分を捨てるようなもんじゃないの、なんて感傷的になっちゃって。

で、せめてもの感謝の気持ちに、
きれいに拭いて「ありがとう」と撫でて、お塩でちょっと清めてあげた。

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見渡せばまわりのご老人たちは、
ガスから電磁調理器に替えた人、宅配弁当一辺倒の人とさまざま。

でも私は、
料理を作れなくなるその日その時まで思いっきり楽しんでいこうと、
新しいガステーブルの前で誓ったのであります。


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やけのやんぱち

世間ばなし➁
06 /22 2023
ハトとの攻防戦、まだ続いています。

南国の毒蛇もどきの赤いだんだら模様のザイルも、効き目ゼロ。

またしても黒い影が現れて、
洗濯物が揺れてバサバサッと人を嘲る羽音。

昔見た「鳥」という恐怖映画の再現です。

「ウワーッ」と声を出してベランダへ飛び出したら、
さすがに慌てて障害物にぶつかりながら逃げ出した。

信じられないんですよ。あんなデカイ図体なのに…。

手摺りと床の5㎝ほどの隙間には、
針金とテープを張り巡らせてあるのに、それを頭で押しのけてもぐりこむ。

見つかるとヘリコプターみたいに垂直に舞い上がり、
網と天井との隙間に巡らせた針金の、わずか10㎝足らずの空間を、
あちこち羽根をぶつけながら逃げるんですから。


おーい、ウルトラマーン! 助けに来てー。
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そこまで苦労しなくたって上は空き部屋なのに、なぜかそこへは行かない。

ほかの棟を見たら、家具を置いたまま10年余も住民不在の部屋があって、
ベランダにはエアコンと外れた網戸、洗濯機まであって
恰好の巣作り場なのに、そこは避けてその真下の家へ頻繁に行く。

その家ではCDをぶら下げて応戦しているものの効き目ナシ。

なにゆえそこまでこだわるのか。

この執拗さはストーカーだよ。接近禁止命令ものだよ。


近くに半分朽ちかけた2階屋がある。
「隣で畑を耕しているじいさんの小屋」とご近所さん。

下が農機具小屋で2階が全部ハト小屋だったけど、
「もうハトの世話はしていないらしいよ」ってんだから、

悪いのは人間でハトに罪はない。罪はなくても今や悪行三昧。


「毎日来てはクルクルパーって鳴くので、ほうきで追っ払ってる」
と、自虐気味のご近所さん。


この方は埼玉のハトポッポで、指名手配のハトではないけれど…。
でも一度でいいから、この丸い頭をポカリとやりたい!
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観察すると、
彼らの飛行はベランダから見て、常に右から左へ移動して逆がない。

しかし逃げ場の多い角部屋を好むかと言えば、そうでもない。
狙われた真ん中の家では、とうとう業者に頼んで全面、網で防御した。


以前は30羽ほど止まっていた川向こうの民家では、
屋根全体に電気を仕掛けたので今は一羽も来ない。
が、フンが流れた外壁は何本もの筋になって無残な姿を晒している。


キジバトは狩猟してもいいのに、
ドバトはなんでこうも自由にさせているんだろう。

ハトの羽根にはダニやノミ、フンには大量の病原菌やウイルスや寄生虫。

お上は「赤ちゃんのいる家は特に気をつけろ」と言いながら、
「威嚇したり傷つけたり卵を除去したら、懲役だ罰金100万円以下だァと言う」


「ハトの繁殖期は3月~11月と、ほぼ一年中。
その間、5回から7回も産むから、年中、網を張って防げ」と言う。

あまりにもバカげていませんか? 
人間の方が一年中、網の中で暮らせって、なんだよ、それ。

何が起きても自己責任って、ハト版マイナンバーカードかよ。

「ドバトは鳥獣保護法から除外する」
という公約を掲げて、立候補しようかしらん。
(笑)

「オイ! ハトのニート野郎! ちったー、こういう方を見習ったらどうよ」
いいねぇ、こういう孤高の鳥さんって…。
鷹

野鳥観察が趣味の人に相談したら、
「鳥は好きなので、あまりつっけんどんにはしたくないです」

と、つっけんどんな返事が返ってきた。

「鳥が好き」というのは、「野外で」「自分には被害が及ばない範囲で」
ということであって、その範疇から一歩も出ないのであれば、
本当の鳥の理解者ではないと思うんだけどなぁ。

で、思案の末、今度は蚊取り線香をつけてみた。


30年も前の蚊取り線香です。登山でヤブ漕ぎのとき腰へぶら下げました。
まだ使えました。キンチョウさん、ありがとう。
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やけのやんぱち、日焼けのなすび。
これでどうだ!と、
雨上がりの早朝に飛来するから、その前に起きてぶら下げましたよ。

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案の定、来ました。つがいで意気揚々と。

立ち昇る煙とにおいに気づいたのか、慌てて避けて通り過ぎました!

やったぁー!
ハトが豆鉄砲食らうとは、このことだね!

と、喜んだものの、私の鼻がムズムズ、ハックション!
煙で鼻炎になりました。


表側はハト、裏側はムクドリの大集団が建物の穴と言う穴へ巣づくり。
ギャーギャーけたたましく鳴くのは許せるとしても、
玄関前や通路にまき散らされる小枝、藁くず、羽根、フンにはゲンナリ。

が、ハトのように洗濯物や布団を汚すようなことがないから、まだ許せる。


攻防はまだまだ続く。

ーーーーー

と、書いてから10日後。ついにハト撃退

蚊取り線香作戦、大成功! 
布団も洗濯物もお日さまをいっぱい浴びて、いい匂い!

でもこれって単に巣づり期間終了ってことかも。
裏側のムクドリの集団は全部巣立って、再び静寂が戻ったし。

ほんの短い至福の時になりそうだけど、ひとまずホッ。
で、間もなく、カブトムシや蛾の襲来です。


と思っていたら、早速お出ましです。

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ーーーby 斎藤氏ーー

「目には目を、歯には歯を、
鳥(鳩)には鳥(鶏)を、正に金鳥ですね!」


ヽ(`ω´*)ノ彡☆ーーー来ちゃいました!

本日、ベランダからグルグル、グルグルと鳴き声が…。
見たらノコノコ歩いてた!

洗濯物を干してあるのに。

再び、蚊取り線香に火を灯しました。ああ…。

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雨宮清子(ちから姫)

昔の若者たちが力くらべに使った「力石(ちからいし)」の歴史・民俗調査をしています。この消えゆく文化遺産のことをぜひ、知ってください。

ーーー主な著作と入選歴

「東海道ぶらぶら旅日記ー静岡二十二宿」「お母さんの歩いた山道」
「おかあさんは今、山登りに夢中」
「静岡の力石」
週刊金曜日ルポルタージュ大賞 
新日本文学賞 浦安文学賞